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憲法改正どうする


 安倍晋三首相は2020年までの改憲を目指しており、自民党憲法改正推進本部は月内にも議論を再開し、通常国会の会期中に党改憲案を策定し、国会に提出したい考えだ。憲法改正をめぐる動きを元衆院議員の山崎拓元自民党副総裁、藤井裕久元財務相に聞いた。

9条2項から改正が正道

山崎拓元自民党副総裁

かつて改憲派の論客だった。

山崎拓元

 山崎 拓氏(やまさき・たく)早大卒。福岡県議などを経て1972年衆院選初当選、12期務めた。防衛庁長官、自民党幹事長、副総裁などを歴任。著書に独自の憲法私案をまとめた「憲法改正」など。81歳。中国・大連生まれ。

 「戦力不保持」を規定した9条2項は、今の自衛隊の実態に沿わないので書き換えるべきだ。「日本国の主権と独立を守り、国の安全を保つとともに、国際平和の実現に協力するため、内閣総理大臣の指揮の下、陸・海・空軍、その他の組織を保持する」などの表現に変える。この考えは議員時代から変わらない。

首相は9条2項を維持して自衛隊の根拠規定を設ける案を提案した。

 「自衛隊の正当化なら誰も反対できない」という考えから出てきたイージーゴーイング(安易)な案。改憲のための改憲だ。本来は2項から見直すべきで、2012年の自民党改憲草案もそうなっている。首相は、憲法改正を志向する彼の支持基盤の期待に応えようとしているだけだ。信念として改憲しようとしているようには思えない。

首相はなぜいま改憲を急ぐのか。

 会見は自民党の党是だ。ただこれまでは衆参で(改憲発議に必要な)3分の2の議席が取れなかったから、できなかっただけだ。今は奇跡的に衆参とも改憲勢力が3分の2以上を占めているから、「絶好のチャンスだ」と捉えているのだろう。

党の議論はどうなる。

 情けないことに今は異論を唱える議員が少ないので首相案が通るだろう。ただ、具体案が出てきた瞬間、憲法学者らから異論が噴出する。2項維持と自衛隊明記は矛盾するから、そこで行き詰まる。仮にその案で強引に国会発議しても、大論争を引き起こし、国民投票で負けるのではないか。

国際協調の重要性追加を

藤井裕久元財務相

安倍晋三首相は9条1項と2項を維持した上で自衛隊を明記する案を示した。

藤井裕久

 藤井 裕久氏(ふじい・ひろひさ)東大卒。大蔵官僚を経て1977年参院選で初当選。くら替えした衆院で90年当選。衆院当選7回、参院2回。自民、新生、新進、自由各党を経て民主党に合流。細川、羽田両政権で蔵相。民主党幹事長、鳩山政権で財務相。85歳。東京都生まれ。

 2項維持は、屁理屈だ。私はあくまで反対だが、もし自衛隊を明記するなら(戦力不保持の)2項も変えるべきだ。論理的に整合性が取れない。

自民党在籍時に改憲をどう考えていたか。

 自民党にいた約15年の間に、改憲を意識したことはほとんどない。改憲は自民党の「立党宣言」にも(立党時の)「綱領」にも入っていない。その下の「党の政綱」に書かれているにすぎない。今でも付き合いのある自民党議員は改憲に慎重だ。自民党も決して皆が改憲論者ではない。

9条以外で改正が必要な項目はあるか。

 「国際協調こそ大事だ」との内容は新たに書き込んでも良いだろう。日本は国連安保理の常任理事国になろうとしているのだから。また、大災害時の議員任期延長など緊急事態条項の創設もある程度考えても良い。

 その際は、政府への権限集中や私権の制限が行き過ぎないように気を付けるべきだ。立憲民主党の枝野幸男代表が検討課題に挙げた「首相の解散権の制約」も傾聴に値する。

今後、野党は自民党にどう対峙(たいじ)すべきだと考えるか。

 野党もそれぞれの党で考えが異なるだろうが、自民党がいずれ改憲案を出してきたときに、全体をまとめて議論するのではなく、項目ごとに議論すべきだ。自民党でも良識的な議員はまだいる。そういった人たちと手を結んで議論を引っ張っていってほしい。