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区庁舎内での政党機関紙配達、世田谷区民が禁止求め陳情


特報’17

議会で批判噴出
区は実態解明の調査へ

 東京・世田谷区の区庁舎内で職員個人に対して政党機関紙の勧誘・配達・集金が行われている実態が明らかになり、世田谷区民がこのほど区議会に配達などの禁止を求める陳情を提出した。これに対し区側は先月10日に行われた区議会企画総務常任委員会で、職員個人による庁舎内での購読や勧誘・配達・集金は、地方公務員法(以下、地公法)および世田谷区庁舎管理規則上問題はないとの見方を示したが、多くの議員から厳しい批判が噴出。陳情は継続審議となり、区側も実態調査を行うことになった。(政治部・亀井玲那)

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世田谷区庁舎内の政党機関紙配達問題で批判が噴出した先月10日の区議会企画総務常任委員会

 世田谷区議会の企画総務常任委員会は先月10日、「庁舎内における個人への政党機関紙の勧誘・配達・集金を禁止するよう求める陳情」の請願審査を行った。

 陳情者は区民の60代女性。きっかけは、友人が区役所を訪れた際に机上に政党機関紙が置いてあって驚いたという話を聞いたことだった。女性によると、机上に置いてあった政党機関紙は日本共産党機関紙『しんぶん赤旗』。どれだけの職員が購読しているのか気になり開示請求を行ったところ、調査等していないため部数は不明、勧誘・配達・集金のための許可証は出していないとの返答があった。さらに話を聞くうちに、区役所職員の中の労働組合員が早朝に職員のデスクへ配達し集金を行っていることや、職員には昇任時に勧誘があり、断り切れず購読しているケースもあることを知ったという。

 女性は委員会冒頭の趣旨説明で「職員であるからといって許可も取らず、自分の部局以外で人のいない時間に個人の机に(機関紙を)置いて回るのは許されないのでは」と訴え、「何より心配なのは、私たち区民の大切な情報が勝手に抜き取られるようなことが起こるのではないか」とセキュリティー面での不安を吐露した。陳情書では「職員の皆様は、区庁舎内では公務員としての政治的中立の立場を守るべきだと思います。区民の大切な情報を預かる区庁舎内に許可なく立ち入り、政党機関紙の勧誘・配達・集金等が行われることのないよう、また個人が購読を強制されることのないよう、管理徹底して頂きたい」と求めている。

 区はこれに対し、庁舎内で私的に購読している機関紙の配達は「弁当の注文のようにあくまで職員の注文による受動的な配達行為であり、秩序維持や安全確保の面からも特に取り締まる必要はない」として、庁舎管理規則第12条で禁止されている「物品の販売、宣伝、保険の勧誘、寄付の募集その他これらに類する行為」には当たらないとの見解を示した。また、地公法第36条で制限されている政治的行為に関しても「庁舎内における政党機関紙の購読は禁止事項にあたらない」と回答。購読の強制の実態もなく、「個人情報や職務上の文書は施錠し厳重に取り扱っている」ためセキュリティー面でも問題ないとの見方を示した。さらに、配布している職員や時間帯については「把握していない」とする一方で、昇任時の勧誘については「管理職昇任時に勧誘があるというのは聞いている」と認めた。これに対し、議員からは「民間企業ではあり得ないことだ」などと区の姿勢を批判する声が多く上がった。

 公明党の岡本のぶ子氏は「(セキュリティー面で)心配ないと言うが、人の行為であるので100%無いとは言えない」と主張。民進党の中村公太朗氏は「行政が極めてずれているということは認識してほしい。税金を使っている役所は民間よりさらに中立性を維持する必要があり、今までなあなあにしてきたものを一度整理するべきだ」と調査の実施を求めた。自民党の河野俊弘氏は「昇任時の勧誘などが本当にあるなら、しっかり調査し通報窓口などを周知するべきだ」とし、日本のこころの阿久津皇氏は勧誘に関して「力関係があれば断り切れないことはある。(勧誘が)あると認識しているにもかかわらず何ら指導をしないというのはおかしい」と疑問視した。

 また公明党の板井斎氏は「販売店の人が来て配るのではなく、間に職員が入って配達しているということは、そこに対価が発生している可能性が高いのでは」と指摘。仮に何らかの形で報酬を受け取っていれば、公務員の副業を禁止する地公法第38条に反するおそれがある。

 世田谷区総務部総務課の担当者は、政党機関紙を配達している人数や部数、報酬の有無についての調査を今後行うのかという本紙の取材に対し、「調査を行う予定であり、内容等を検討中です」と回答した。全国では、神奈川県鎌倉市など職務の中立性の観点から庁舎内での政党機関紙の販売を禁止する自治体もある。世田谷区では陳情については継続審議となった。