世界日報 Web版

首相所信表明、もっと積極的に改憲訴えよ


 安倍晋三首相が国会で所信表明演説を行った。先の衆院選では、自民、公明の与党で憲法改正の発議に必要な3分の2を超える313議席を獲得したが、改憲への言及はわずかだった。

 自民党では改憲案の検討が進んでいる。首相はもっと積極的に改憲を訴えるべきだ。

 北への圧力を一層強化

 首相は北朝鮮情勢と少子高齢化を「国難」と位置付け、これらを乗り越える決意を表明。北朝鮮に対しては「国際社会と共に、圧力を一層強化していく」と強調するとともに「あらゆる事態に備え、強固な日米同盟の下、具体的行動を取っていく」と述べ、ミサイル防衛体制を整備する方針を明言した。

 北朝鮮は弾道ミサイル発射を繰り返し、9月には6回目の核実験を強行するなど脅威は増大している。米韓両国をはじめとする各国と連携し、対北包囲網を構築することが急がれる。

 忘れてならないのは拉致問題だ。北朝鮮に横田めぐみさんが拉致されてから今月で40年が経過した。首相は一日も早く全ての被害者の帰国を実現しなければならない。

 気になったのは中国に対する姿勢だ。首相は習近平国家主席との会談に触れ、「日中韓サミットを早期に開催し、3カ国の連携をさらに深めていく」と述べた。一方、来日したトランプ米大統領との会談で推進を確認した「インド太平洋戦略」には言及しなかった。

 この戦略はアジアからアフリカに至る地域の安定と成長を目指すものであり、覇権主義的な動きを強める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。確かに、北朝鮮問題解決のために北への影響力の大きい中国の協力は欠かせない。首相は中国を刺激したくなかったのかもしれないが、中国の強引な海洋進出に目をつぶることはできないはずだ。

 少子高齢化対策では、人工知能(AI)など技術革新による「生産性革命」と、教育無償化など「人づくり革命」の断行を訴えた。2019年10月の消費税増税による増収分を「子育て世代、子供らに大胆に投資する」とも述べた。

 しかし、少子化の背景には晩婚化と非婚化がある。若い男女に、どのように結婚や家庭の価値を伝えていくか。そのことに注力しなければ、少子化の克服は困難だ。こうしたことも念頭に対策を進めてほしい。

 首相は「互いに知恵を出し合いながら、共に困難な課題に答えを出していく。そうした努力の中で憲法改正の議論も前に進むことができる」と述べた。だが、具体的な改憲項目などに触れなかったのは物足りない。

 自民党は衆院選公約で、9条への自衛隊の根拠規定追加や緊急事態対応など四つの改憲項目を盛り込んだ。年内に党の改憲案をまとめ、来年の通常国会に提出する目標を掲げているが、今後の国会審議で改憲論議を深める必要がある。

 国難克服への道筋提示を

 首相は日本の未来を見据えながら与野党の枠を超えた建設的な政策論議を行うよう訴えた。各党は党利党略にかまけることなく、首相の呼び掛けに応える論戦を展開して国難克服への道筋を提示してほしい。