民進新代表、批判だけでは理解得られぬ


 民進党は代表を辞任した前原誠司氏の後任に参院議員の大塚耕平元厚生労働副大臣を選出した。大塚氏は「次期衆院選で立憲民主党、希望の党、民進党を中心に政権交代を実現しなければならない」と表明した。だが、この発言には首を傾げざるを得ない。

希望では混乱広がる

 安倍政権が憲法解釈を変えて集団的自衛権行使を容認した安全保障関連法をめぐって、希望は衆院選公約で容認を掲げた。一方、立憲は「違憲」と位置付けている。民進がこの両党と共に政権交代を目指すというのは「野合」にならないか。

 大塚氏は、立憲、希望両党について「まずは信頼関係を築くことが大事だ」と指摘。「すぐに合併、再編が行われるということはない」と述べている。とはいえ、安倍政権批判のみを旗印に野党が共闘しても国民の理解は得られまい。

 仮に政権交代を実現したとしても、その後の政権運営で混乱を招くことは目に見えている。大塚氏に求められるのは、なぜ民進が分裂したかを検証し、その反省を生かして政権担当能力を磨くことだろう。

 大塚氏を代表に押し上げた原動力は、参院に多くの組織内議員を有する旧民社党系グループだった。このグループは共産党との連携には否定的だ。新代表選出をめぐっては、共産党との協力を容認するリベラル系議員の間で蓮舫元代表を推す動きもあった。新執行部の党運営には曲折も予想される。だが、党をまとめることができなければ信頼回復は難しい。

 一方、衆院選で敗北した希望では混乱が広がっている。敗北を受け、小池百合子代表(東京都知事)は国政と一定の距離を置く考えを示している。ところが小池氏の求心力低下に伴い、民進からの合流組の一部が安保法を「憲法違反」と主張し始めているのだ。これは有権者を愚弄することにほかならない。

 小池氏は「改革保守」を掲げ、合流を決めた民進に安保法や憲法改正への容認を迫った。この際の「排除」発言で希望は選挙戦で失速したとされるが、理念・政策で一致できなければ同じ政党で活動できないのは当然である。

 小池氏が政権交代に向け、与野党間で外交・安保政策の共通基盤を築こうとしたことは間違っていない。希望失速の真の原因は、小池氏が衆院選に出馬しなかったことではないか。衆院選は政権選択選挙であり、代表の小池氏が出馬しなければ、有権者は「本気で政権交代を目指していない」と考えて希望に投票しようとは思わないだろう。

 衆院選で当選した50人のうち民進出身者は約8割を占めるが、分裂前の民進内にあった安保政策や共産党との関係をめぐる対立が、そのまま希望に持ち込まれた形となっている。このままでは結局民進の二の舞いとなって有権者の支持は得られないだろう。

野党は悪弊を断ち切れ

 野党として政権を批判することは理解できる。だが、そこには現実的で建設的な代案が伴わなければならない。55年体制以来の「抵抗野党」の悪弊を断ち切るべきだ。