民進党公約、安保法制の「白紙化」は愚論だ


 わが国は戦後70余年、外国からの武力攻撃の危険にさらされたことがない。それが今、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に直面しており、国民の生命と財産をどう守るのか、安全保障の在り方が厳しく問われている。

 ところが、野党第1党の民進党は、来る総選挙の公約に「安保法制の白紙化」を掲げるとしている。では、代案があるのかと言うと、それはまったく示さない。北朝鮮危機が迫る中で、あまりにも無責任だ。

自衛隊の憲法明記も反対

 昨年3月に施行された安保法制は、わが国を取り巻く国際安保環境の変化に対応するものだ。北朝鮮のみならず、中国は南シナ海で基地を建設するなど西太平洋への軍事進出の野望をたぎらせている。こうした「時代の変化から目を背け、立ち止まるのはもうやめよう」(安倍晋三首相)と、安保法制が制定された。

 それまでは韓半島で有事が発生し、韓国に在住する日本人が米軍艦船に助けられた際、自衛隊はその米艦を防護できなかった。また米国を狙った弾道ミサイルを迎撃できないばかりか、米国の敵国船舶に対し強制的な船舶検査(臨検)を行うこともできなかった。

 そこまで自衛隊の活動を制約するのは、国民を守る国家の使命を放棄するに等しく、日本を守ろうとする米国民の気力を失わせ日米同盟を破綻させる。

 それで安保法制では集団的自衛権行使を限定的に容認した。他国が攻撃され、これにより「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合を「存立危機事態」と位置付けて対処する。米領グアム島を狙った弾道ミサイルの発射はまさに「存立危機事態」だろう。

 想起すべきは、有事法制の整備が1990年代の韓半島危機から始まったことだ。北朝鮮が密(ひそ)かに核開発を進めたことを受け、97年に日米同盟の再構築を目指し「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)が改定された。

 それに基づき99年に周辺事態法、2003年に武力攻撃事態対処法、04年に国民保護法の一連の有事法制が整備された。これには民進党の前身の民主党も賛成したはずだ。

 これに続く安保法制は、15年のガイドライン改定に基づくもので「平時から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、日本の安全が損なわれることを防ぐための措置をとる」のが狙いだ。

 北朝鮮危機が迫る中でこれを白紙に戻せと主張するのは、これまで積み重ねてきた有事の備えにほころびを生じさせ、日米同盟の絆を根底から破壊する愚論だ。

 民進党は日米安保条約の破棄を党是とする共産党との選挙協力も曖昧にしている。憲法9条に自衛隊を明記することにも反対だという。

前原氏は政策出し直せ

 安保政策に強いという前原誠司氏は何のために民進党代表になったのか。

 安保政策を出し直さなければ、政権交代可能な党と認めるわけにはいかない。