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軍事的脅威の対処こそ急務


南シナ海 強まる中国支配 安保専門家に聞く(中)

 大陸間弾道ミサイルの発射を成功させるなど北朝鮮の核・ミサイルの脅威は現実味を増し、我が国の安全保障を脅かしている。

 緊迫の度を高める我が国周辺の平和と安定の維持を、国民は「安倍1強」と言われた安倍首相のリーダーシップに期待。安倍政権は長期にわたる高い支持率を誇ってきた。しかし、森友・加計問題などに加え南スーダンPKO(国連平和維持活動)部隊の日報問題でその信頼を失ってしまった。

 小野寺五典防衛相は3年足らずでの異例の再登板だ。日報問題で防衛省は、背広組と制服組の対立が表面化し、大臣、次官、陸上幕僚長が辞任・退任した。このため新大臣にとってまずは省内の態勢立て直しが急務だとする声は多い。

 だが、この問題は防衛省・自衛隊の体質というよりも、稲田朋美前防衛相の心もとないガバナンス(統治)や国会答弁に依(よ)るところが大きい。稲田氏の辞意表明後すぐに、防衛政策に通じ、安定した国会答弁に定評がある小野寺氏の復帰を望む声が省内に上がったことからもそれは明らかだ。前回任期中に、全国の部隊を丁寧に視察して回った姿勢に信頼を寄せる自衛隊員は多い。

 小野寺氏は、就任後の記者会見で、「防衛省・自衛隊のガバナンスに対する信頼を損なった。抜本的な対策を講じて信頼回復に努めたい」と決意を述べた。

 的確なガバナンスの下、直面する軍事的脅威に対処する防衛態勢の構築に早急に取り組み、PKO参加の在り方を明確にすることこそ、国民の信頼回復につながり、そして、隊員の士気を高め、省内に結束をもたらすことになろう。

 安倍首相は3日、改造内閣が発足してすぐ、小野寺氏に対し、2013年末に策定された「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の見直しを検討するよう指示した。

 防衛大綱は、安全保障の基本方針や自衛隊の役割、主要装備など防衛力の指針を定めたもので、通常、10年間程度の防衛力整備を念頭に置かれる。4年を経ずしての見直しは異例の大幅な前倒しとなる。北朝鮮や中国の脅威を深刻に受け止めての判断とみられるが、極めて大胆な決断である。

 首相の指示を受けた小野寺氏は、防衛相就任前、自民党政調会長代理として、北朝鮮の弾道ミサイルを念頭にした敵基地反撃能力などの防衛力整備を求める提言をまとめ、政府に提出した実績を持つ。我が国を取り巻く軍事的パワーバランスは変化しつつあり、自衛隊と米軍の盾と矛という役割分担の見直しも迫られている。大綱の見直しでは、敵基地反撃能力の保有についても検討される見通しであり、作業の責任者としても小野寺氏は適任である。

 ミサイル防衛については、防衛省は地上型イージスシステムの導入を本格検討中だ。しかし、中国のミサイルによる飽和攻撃にはまだ不十分だ。現在、米海軍が開発中の電磁レールガンの導入も検討すべきだ。これが実戦配備されれば弾道ミサイルの脅威を大幅に減らすことができる。無力化できるとみる専門家もいる。

 外務・防衛両省は、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を8月中旬にも開催する方向で調整中だ。先送りされている日米2プラス2の開催を実現し、日米同盟強化と新たな防衛力整備の道筋をつけることができるか、手腕が試される。

(政治部・小松勝彦)