みんなの党分裂、再編の前に政治家の器広げよ


 みんなの党が分裂し、離党届を提出した江田憲司前幹事長らは民主党の細野豪志前幹事長、日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長らと勉強会「既得権益を打破する会」を設立した。

 参加者は政権交代を可能とする政界再編につなげたい考えだが、これまでの新党政治家らの変幻極まりない行動に国民は不信感を抱いていることから、これを乗り越える必要がある。

渡辺代表と江田氏が対立

 民主党政権の誕生につながった政界再編を、再び「政権交代」を合言葉に模索する別の動きが出るのは、民主党が政権を維持できなかったこととともに、衆参両院で安定多数を握る自民・公明の巨大与党に対し、野党側に動揺があるからである。

 加えて、みんなの分裂には、7月参院選での選挙戦略をめぐる確執があった。江田氏は維新との選挙協力を進めたが、渡辺喜美代表は維新共同代表の橋下徹大阪市長の失言に火が付くと協力を解消した。

 この確執は江田氏が幹事長から外される党人事へと続き、さらに臨時国会終盤での特定秘密保護法案をめぐる渡辺代表の対応によって、14人の集団離党という結果を招いた。

 「官僚の力を強める」など江田氏らが特定秘密保護法を批判するのは、一部の反対世論に便乗するもので残念だ。みんな、維新などは基本的に必要な法との認識があったはずだ。今日、同盟国との協力なしに国の安全保障を担える時代ではなく、外国から情報を得るには、秘匿を保証しうる法整備が十分でなければ信頼されない。

 野党も政権交代を掲げる以上は、責任政党としての振る舞いが問われる。安全保障に関する国家の課題に取り組むよりも、一部世論に迎合する傾向が離党組には強いのではないか。その意味では、維新も石原慎太郎共同代表が党首討論で同法成立を支持しながら、党内で足並みが乱れた。

 また、民主党でも山口壮衆院議員が離党するなど新たな離党者が出始めている。維新では東国原英夫衆院議員が「維新の政策や理念の変質」を理由に議員を辞職する。

 いずれにせよ、「政権交代」を目指し、現実的な責任政党を標榜(ひょうぼう)する民主党や「第三極」の野党各党が、路線や安倍政権との距離をめぐる党内対立、議員個人の思惑などによって動揺している。

 みんなの分裂はその典型だが、離党組の新党が軌道に乗るかは疑問だ。昨年12月の衆院選でも福島第1原発事故を受けた反原発などの世論に期待して、民主党や社民党を離党した議員らが、新党を結成し参戦した。しかし、思わしい選挙結果を得られなかったのは、分裂の過程で既に政治に必要なまとまる力が欠けていたからだ。

有権者は期待できない

 かつての保守合同による自民党結党、非自民非共産勢力による新進党結党、民由合併後の民主党のような政界再編や新党旗揚げは、小異を捨てて大同に就くプロセスがあった。そこに有権者の期待が集まった。似通う政策を掲げながらも分裂するのは、詰まるところ政治家の器の問題ではないのか。

(12月12日付社説)