日米韓首脳会談、対北包囲網構築へ連携強化を


 安倍晋三首相、トランプ米大統領、韓国の文在寅大統領による初の3カ国首脳会談が訪問先のドイツ・ハンブルクで行われ、脅威を高める北朝鮮への圧力強化の必要性を再確認した。

 大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に成功した北朝鮮を押さえ込むのは国際社会の喫緊の課題である。

対話重視の文大統領

 3首脳は北朝鮮への厳しい制裁措置を含む新たな国連安全保障理事会決議の採択に向け、緊密に連携を図ることを確認した。北朝鮮に対する国際包囲網を構築する上で日米韓の連携強化は欠かせない。

 その意味で懸念されるのは、文氏の対話重視の姿勢だ。文氏は大統領就任当日、国民向けのメッセージで「条件が整えば平壌にも行く」と語った。さらに、ベルリンでの演説では「金正恩(朝鮮労働党)委員長と会談する用意がある」と踏み込んだ発言をしていた。

 発言の背景として考えられるのは、南北とも同じ民族という文氏の民族主義的志向と南北関係を悪化させたのは圧力一本槍の保守系の李明博、朴槿恵両政権の「政策失敗」によるとの主張である。だが、日米との足並みの乱れは北朝鮮に付け入る隙を与えるだけだ。

 安倍首相は会談の冒頭、北朝鮮によるICBM発射に言及して「北朝鮮には真剣に対話する意思などないことを示すものだ」と指摘。「対話を行うには、非核化に向けた北朝鮮の真剣な意思と具体的な行動が必要だ」と強調した。

 認識しなければならないのは、ICBMの発射実験成功によって、北朝鮮の脅威は日本や韓国にとどまらず、米国をも含めて「世界的規模」に広がったことだ。

 ティラーソン米国務長官は「世界規模の脅威には世界規模の行動が必要だ」と述べた。今回発射された北朝鮮のICBMは米アラスカ州を射程に収める可能性が指摘されている。このためトランプ政権は米本土への新たな脅威として、対北朝鮮戦略の再検討に入ったと伝えられている。

 ティラーソン長官は「北朝鮮労働者を受け入れている国、経済・軍事面で利益を供与している国、安保理決議を完全履行できていない国」に行動を要求した。これは明らかに中国やロシアを念頭に置いたものだ。

 日米韓首脳会談では、北朝鮮に影響力を持つ中国が、より大きな役割を果たすことの重要性も確認した。北朝鮮の核・ミサイル問題を解決するには中国の協力が求められる。

 しかし、中国は圧力強化に慎重だ。中国の習近平国家主席はロシアのプーチン大統領との会談で、北朝鮮に核・ミサイル開発の停止を求めると同時に米韓が軍事演習を中止する必要があるとの認識で一致するなど、連携を強める日米韓を牽制(けんせい)する動きに出ている。

圧力念頭に中国説得を

 トランプ政権は北朝鮮と取引のある中国の丹東銀行を制裁対象に加え、安倍首相はこれを評価した。

 日米韓は中国への圧力強化も念頭に、北朝鮮問題で協力するよう説得する必要がある。