臨時国会が閉幕 退屈な審議の一掃を


 このところ永田町は短命内閣続きだ。だから国民は長期政権の味を知らない。交代ばかりしている短命政権に愛想を尽かしたのか、長期政権に郷愁を示す傾向さえ感じられる。

 しかし政権は長ければいいというものではない。戦後自由党の吉田茂内閣が政権の座を独占した。別に大きな失政がなかったにもかかわらず国民は次第に吉田内閣を疎んじはじめた。要するに吉田内閣に飽きたのだ。

 といって社会党政権に期待するのは危険すぎる。そこで保守合同後の自民党内で政権タライ回しが続くことになった。その後遺症が今に受け継がれている。

 世間は飽きっぽい。国民は気まぐれだ。近い将来、永田町にどんな革新政権が店開きするかもしれない。しかしそれは神様の裁量の域だ。われわれ下々のものの出しゃばる幕ではない。

 永田町の進歩は腹立たしいほどのろい。それでも年とともに一歩半歩と前に進んでいる。純血の社会主義政権はまだ現れないが、混血の社会党連立政権はすでに実現済みだ。別に天地がひっくり返るようなことはなかった。自民党中心の保守政権といわばどっこいどっこいだ。

 55日間にわたった臨時国会も8日の日曜日に終わった。この間国会は無風状態で終始したが、幕切れ近くの本会議で参院議長席を取り囲んで与野党にひと悶着(もんちゃく)あったのは御愛嬌(あいきょう)だった。昔だったらこんなことでは済まない。与野党入り乱れての乱闘騒ぎに及んでもおかしくなかったろう。

 永田町は短命ばやりだが、安倍内閣は久しぶりに長期政権の風格と実力を見せはじめている。永田町は政争の場だが、与野党取っ組み合いの修羅場などトンと絶えた。与野党話し合いで万事を決める風潮が主流となっている。いい傾向に違いない。しかしマスコミは意地悪だ。国会論議は不十分、民意軽視の強行審議などと悪口ばかり叩(たた)いている。

 なるほど特定秘密保護法案のような重要法案では、慎重審議は必要だ。しかし、引き延ばしのためにするような審議は、国民にとって退屈でもある。国民に注目されるためには、与野党が国会で本音と本音をぶつけ合うより外はない。本音と本音がぶつかれば火花が散る。その火花に国民の目が集中する。

 政党には正面と裏の議論がある。裏の議論は裏でやるがいい。国会はあくまで表面の議論だ。正々堂々と隠し立てなく表玄関から争うのが国会のスジだ。

 国権最高の場所が、日本で一番退屈なところとなっては国民が困る。憲法が泣く。

(I)