日露首脳会談、したたかさが必要な領土交渉


 安倍晋三首相はロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と会談した。北方領土問題を含む平和条約交渉について首相は「手応えを強く感じ取ることができた」と述べ、交渉の進展に強い意欲を示した。

 経済協力が先行し、領土問題が置き去りにされるのではないかという懸念はあるが、待っているだけでは領土は返ってこない。ロシアのしたたかさを超える交渉を期待したい。

対露経済協力案を説明

 両首脳は12月、首相の地元である山口県長門市で改めて会談することで合意した。その前にもペルーの首都リマで11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に会談を行うこととなった。

 首相は今回、大統領と2人だけで約55分間にわたり突っ込んだ協議を行い、経済協力を先行させる姿勢を明確にした。ロシアのソチで5月に行われた会談で、首相は極東地方の産業振興・輸出基地化をはじめとする「8項目の協力案」を示した。

 今回は「8項目の協力案」をより具体的に説明し、エネルギー分野で官民協議会を設置することなどで合意。また、新たにロシア経済分野協力担当相を兼務させた世耕弘成経済産業相を同席させ、政府一体で対露協力を拡大する方針を強調した。

 首脳会談の翌日、首相はウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」で演説し、プーチン大統領との首脳会談を定例化し、毎年ウラジオストクで行うことを提案。「私たちの世代が勇気を持って責任を果たしていこうではないか」と、北方領土問題と平和条約の交渉を早期に決着させるよう呼び掛けた。

 プーチン大統領は「8項目の協力案」について「唯一の正しい道だと考えている」と高く評価するとともに、首相の北方領土問題解決の呼び掛けに対し「我々はきっと問題を解決するだろう」と応じた。しかし、どのような形で解決しようとしているのかは、定かではない。

 安倍首相との会談に先立つブルームバーグのインタビューでは、「領土を売り渡すつもりはない」と明言し、日本側を牽制(けんせい)した。また、領土問題について「何らかの妥協点を見いだせる」と語ったが、そのためには、ロシアが現在、中国との間で築いているのと「同じぐらい強い信頼関係」が、日露間に構築されることが必要だと指摘した。

 ロシアは主要輸出品である原油の価格低迷により景気が大幅に悪化し、これにウクライナ問題を受けた欧米の経済制裁が追い打ちをかけている。日本からの経済協力は極めて魅力的だ。欧米の経済制裁を骨抜きにする形にもなる。このため欧米には、日本の経済支援前のめりを警戒する空気が強い。

首相は足をすくわれるな

 北方領土問題の解決は憲法改正と並び、首相が後世に残す「レガシー(遺産)づくり」を意識して取り組む最重要テーマとされる。意気込みは高く評価したいが、それが焦りにつながることだけは避けなければならない。12月のプーチン大統領訪日に向け日露間の駆け引きが活発化する中で、ロシアの交渉術に足をすくわれないよう万全を期すことを求める。