参院選結果、安保・経済固め改憲に熟議を


 第24回参院選の開票結果が確定した。自民党と公明党の与党は合わせて70議席を獲得し、公示前の議席数を11伸ばし、非改選と合わせ146議席の安定多数を確保した。衆院での3分の2以上の絶対安定多数とともに、安倍政権は今後の政権運営に盤石の基盤を得た。当面する厳しい内外情勢の安定に果敢に取り組んでほしい。

中朝の脅威が高まる

 今回の参院選の争点に早くから設定されたのが安保法制だった。昨年の安全保障関連法をめぐる与野党対決で国会が混乱した末に同法が成立するや、廃止を求める野党共闘を共産党が主導した。集団的自衛権行使の一部容認を含む同法を「違憲」と訴える野党勢力の運動は、今回の参院選における1人区全てで民進、共産、社民、生活の野党4党の統一候補を生み出し、最大の注目点となった。

 しかし、昨年の国会周辺の反安保法制デモや一部マスコミの異常なほどの反対キャンペーンとは裏腹に、野党共闘への支持は広がりを欠いた。参院選公示前には中国軍艦が沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に入り、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験は選挙期間中にも繰り返された。南シナ海では中国の「力による現状変更」が進んでおり、我が国周辺の安全保障環境は厳しさを増している。

 このような中で、野党共闘の核になる民進党と共産党の安保政策の矛盾が、選挙戦の論戦を通じて露(あら)わとなった。与党側からは、特に党綱領で日米安保条約の破棄と自衛隊の解消を明記している共産党と、国民の生命・財産、領土・領海・領空を守るための自衛力整備と日米同盟の深化を求める民進党との「民共共闘」の矛盾を突かれた。

 これに対し、安保関連法廃止などを求める野党側からは「首相の暴走」や「憲法改悪」を許すなと、安倍政権の「危険性」を強く主張する反対論が叫ばれた。だが、自民党と公明党が議席数を伸ばし、両党が比例区の得票も伸ばしたことは、いかに野党側の主張に説得力がなく、反対ありきの無責任な共闘であったかを示している。

 一方、経済問題では地方が持つ格差感は強く、とりわけ北海道、東北の各選挙区での苦戦について与党側は重く見るべきだ。東日本大震災からの復興が未だ途上にある中で、農協改革、環太平洋連携協定(TPP)への農漁村の反発や不安は、進む過疎化と相まって深刻である。

 安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」について、地方に恩恵はないと主張した野党統一候補が支持を得たことは否定できない。与党は秋に今年度の第2次補正予算案を編成し、経済対策を講じるが、TPP批准に向け、経済の好循環実現をどう図るかが大きな課題になる。

憲法審査会で条文案を

 今回の参院選で3分の2の議席を改憲勢力が占めたことで、憲法改正の国会発議が可能になる。議員らの責任は今まで以上に重くなったと言える。

 かつて衆参に設置されていた憲法調査会では、見直しの必要があるとの意見が多数だった。今後の憲法審査会で熟議の上で合意を得た条文改正案をまとめるべきである。