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自公勝利、改選過半数 「志」達成へ慎重な舵取りを


編集局次長・政治部長 早川一郎

 安倍晋三首相が勝敗ラインとし獲得議席目標に掲げた「与党で改選過半数」を達成した。これは首相が判断した消費税増税再延期を踏まえた経済政策「アベノミクス」の加速を国民が選択したものと言える。

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当選確実者にバラを付ける安倍晋三首相(左から2番目)と自民党幹部 10日夜、自民党本部

 だが安心は束の間だ。英国の欧州連合(EU)離脱、中国経済の不確かさや国内の個人消費の低迷など前途に多難が予想される。秋の国会でまとめる総合的な経済対策で景気を持ち直すため、内閣改造を念頭に強力なリーダーシップを発揮しなけれなばらない。

 改憲勢力が参院で議席を大きく伸ばした意味も大きい。首相はこれまでになく「志」達成への覚悟を深めていよう。これからが真価の発揮のしどころだ。党則により首相(総裁)の任期の間で次の参院選はない。その意味で「安倍政治の総決算」をすべき時期に突入したと言える。

 ただ、首相が「これからは憲法審査会でいかに与野党で合意をつくっていくかだ」と語ったように、野党第一党の民進党とも議論を深めて改憲原案をまとめ国民投票にかけたいのが今後描くシナリオだ。そうだとすれば、すべての野党に改憲の議論を呼び掛けながらも、とりわけ民進党内の保守派に対する説得作業を強めなければならない。

 その際、必要なのは、各党が共感しやすいテーマで原案をまとめる努力をすることだろう。例えば、外国からの攻撃に対処するような安全保障(有事)に関してではなく、大規模自然災害などの発生に備えた「緊急事態対処規定」条項を設ける提案をしたらどうか。

 先進諸外国は当然のこと明治憲法にあったこの規定は“自然災害大国”日本には不可欠な条項のはずである。こうした積極的な働き掛けを慎重かつ丁寧に行いながら政局の舵取りをし改憲実現の第一歩を踏み出すことが肝要だ。

 その上で、改憲の前例を積み上げて国民の抵抗感を弱め理解を十分に深めてから本丸の9条改正に臨むことが現実的だろう。

 また、沖縄で現職閣僚が敗れたことは普天間基地の辺野古移設や日米同盟の強化を安保政策の主柱とする政府にとって痛手だ。しかし、一方で中国や北朝鮮による軍事的な脅威が急増していることを考慮すれば、県民の理解を求める作業はますます不可欠である。首相はもとより新任の沖縄担当相にその気概を求めたい。

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