沖縄県、革新共闘にほころびも


16参院選 注目区を行く(4)

 普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設反対の県民感情を利用し、序盤から優位に戦う無所属新人の伊波洋一を、現職大臣で自民党の島尻安伊子が激しく追う展開になっている。

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 島尻は公明党の推薦を受け、同党の比例代表候補・秋野公造と政策協定を締結、3期目の当選を目指す。ところが、同党沖縄県本部は辺野古移設反対の立場を取る。そのため、「選挙戦では普天間移設問題を封印する」というのが暗黙の了解だ。

 「公明が本気で動かなければ島尻さんは勝てない」と自民党県連幹部は危機感を募らせる中、6月29日、那覇市で秋野と合同で総決起大会を開いた。

 島尻は辺野古問題には触れず、沖縄担当相としての数々の実績をアピールした。沖縄振興予算で前年度比10億円増額の総額3350億円を獲得、沖縄が自由に使える子供貧困対策費を新たに10億円計上した。基地問題では、在沖米軍基地の整理縮小を積極的に行うほか、跡地利用促進法の制定など見える形での負担軽減に取り組んでいる。

 島尻は「基地反対の県政にあって沖縄はどこに向かうのか心配だ」「沖縄の選挙は基地か経済の択一と言われるが、いま一度立ち止まって考えてもらいたい」と、これまでの実績と政策実行能力を強調する。

 応援に駆け付けた宜野湾市の佐喜真淳市長は、「宜野湾市長を任期途中で投げ出し、知事選に出馬。次は市長選に出て負けた。それで今度は国政に出たいという。そんな人に任せてもいいのですか」と訴えた。

 序盤には、小泉進次郎衆院議員が那覇市入りし、「無責任な人に政治をやらせてもいいんですか」とアピール。演説後、中年女性らの握手攻めを受けた。さらには、菅義偉官房長官、自民の茂木敏充選対本部長らが次々と沖縄入りし、「絶対に落とすわけにはいかない」と、陣営内の緊張感はますます高まっている。

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翁長雄志知事が不在だった革新系合同演説会に集まった支持者たち=7月1日、沖縄県那覇市の県庁前

 一方の伊波。那覇で行った出陣式の後、真っ先に向かったのは、名護市辺野古の海兵隊キャンプ・シュワブのゲート前だ。「『辺野古新基地』を作らせない」とのスローガンを繰り返した。

 翁長雄志知事をはじめ、県選出の野党国会議員5人、名護、那覇の両市長、そして、共産、社民、地域政党の沖縄社会大衆党などが支援。「翁長知事を支える」「オール沖縄で」を前面に出して、県民の支持が高い翁長の威を借り、「打倒、安倍暴走政権」で「『オール沖縄』から『オールジャパン』へ」を訴える戦法だ。

 1日には那覇市で伊波の応援演説をした共産党の志位和夫委員長は、「憲法改正を絶対に許してはならない」と安倍政権批判に徹したが、同党前政策委員長が防衛費を「人を殺すための予算」と発言したことについては一切触れなかった。生活の党の小沢一郎代表は、野党共闘のために全選挙区での候補者擁立を断念した共産党を賛美した。

 ただ、「オール沖縄」陣営は一枚岩ではなくなっている。県議選では共産党が1議席増やした一方で、元自民系の「新風会」の2候補が落選したからだ。1月の宜野湾市長選で革新候補が大敗を喫したことを受け、同候補選対本部長代行だった伊波の責任問題も陣営の結束に影響している。(敬称略)

(2016参院選取材班)