参院選挙、世界の激変を憲法論議で問え


 国際社会で今、地殻変動が起きている。英国の欧州連合(EU)離脱や米国の「トランプ現象」など先進国で孤立主義の動きが強まる一方、海洋進出を加速させる中国は「遅れてきた帝国」を思わせる。少なくとも第2次世界大戦の「戦後」は間違いなく終わりつつある。

 中朝の脅威が高まる

 わが国はこうした世界の激変にどう臨むのか。参議院が「良識の府」ならば、そうした大局の論議が参院選で行われてしかるべきだ。とりわけ「戦後日本」を形づくってきた現行憲法のもとで、これからも国が立ち行けるのか。憲法論議から逃避すべきでない。

 現行憲法が制定された70年前の世界人口は20億人だったが、今や70億人へと3倍以上に膨れ上がり、世界史を塗り替える変化が何度かあった。

 戦後世界を象徴する東西冷戦は1990年代初めに終焉(しゅうえん)し、2001年には米国で9・11同時多発テロ事件が起こり、その後、世界は大きく変わった。「世界の警察官」を任じる米国がオバマ政権下で衰退し、そして今回の英国のEU離脱だ。トランプ現象などに見られる孤立主義が影を落としつつある。

 その一方で、中国の海洋進出は南シナ海にとどまらない。今月、中国海軍の艦艇が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の接続水域に入ったほか、海軍情報収集艦が鹿児島県・口永良部島の沖合の日本領海に侵入するなど軍事進出が露骨になってきた。

 北朝鮮は国連安保理決議を無視して新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられるミサイル2発を発射するなど、核・ミサイル開発に突き進んでいる。わが国を取り巻く国際安保環境は激変してきた。

 こうした中、参院選では改憲派が国会発議に必要な3分の2以上の議席を占めるかが焦点だ。民進、共産など4野党は「3分の2」阻止に向け「9条堅持」を主張しているが、それで平和を守れるか大いに論ずべきだ。

 例えば、世界平和を希求する国連憲章は、加盟国に軍隊を保有し、集団安全保障もしくは個別的・集団的自衛権の行使をもって平和を維持するよう促している。ところが9条は軍隊を明示せず、自衛権を制約し、国際貢献にも足かせをはめてきた。

 これに対して安倍政権は安保関連法を制定し国際貢献にも積極的に臨むという。だが、それだけで「国際社会において、名誉ある地位」(前文)を占めることができるのか。与党こそ9条論議を呼び掛けるべきだ。

 そもそも自民党は改憲を目指し、保守合同によって結党された。その立役者だった三木武吉は結党の理由を「一つは保守勢力の分断確執によって失わずともすむ議席を失い、それがため憲法改正の機会を永久に失う恐れである。今一つは社会党発展に内包する容共勢力の進出」(御手洗辰雄著『三木武吉伝』)としている。

 改正の必要性訴えよ

 「自公」対「民共」はまさにこの構図だ。与党は今参院選で激変する国際情勢を訴え、改憲の必要性を問わなければ、それこそその機会を永久に失いかねない。そう自覚し憲法論議に臨んでもらいたい。