民主・維新、与党に現実的な対案示せるのか


 民主党と維新の党は来年の通常国会での統一会派結成で正式に合意した。しかし両党が一致した基本政策を見る限り、与党に現実的な対案を示せるか疑問が残る。

「違憲部分を白紙化」

 両党の勢力を合わせると衆院92人、参院64人となる。民主党の岡田克也代表は「1プラス1が、3にも4にもなるパワーを発揮し、安倍政権の暴走を抑えていく」と強調。維新の松野頼久代表も「1強と言われる自民党に対し、しっかりチェック機能を果たす」と語った。

 来夏の参院選に向け、安倍政権に対抗できる勢力結集の動きを加速する狙いがあろう。確認文書では、政権交代が可能な政治を実現するため「両党の結集も視野」に入れるとした。

 政権交代を目指すのはいい。だが基本政策では、先の通常国会で成立した安全保障関連法について「憲法違反など問題のある部分をすべて白紙化する」としている。これで日本の防衛に責任を持てるのか。

 中国の強引な海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などで、日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。日米同盟を強化して抑止力を高める目的で、政府は集団的自衛権の行使を限定容認するための憲法解釈変更を行った上で安保関連法を成立させた。これに民主党や維新は激しく抵抗した。

 維新は政府案への対案8本を提出したが、独自の概念で個別的自衛権と集団的自衛権の区別が曖昧となり、国際的な批判を受けかねないものだった。民主党は対案1本にとどまり、政府案への反対に終始した。

 基本政策では「厳しい環境に対応できる法案を提出する」と明記している。しかし民主党は党内で安全保障をめぐる意見対立を抱え、集団的自衛権の行使容認に関する見解の取りまとめを避けている。今のままでは国民の納得できる法案を作れるのか疑問符を付けざるを得ない。

 民主党が野党に転落してから間もなく3年が経過するが、国民の支持が回復する兆しは見えない。時事通信が今月行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比0・7ポイント増の41・2%、自民党は同0・3ポイント増の23・1%と微増した。

 これに対し、民主党は同1・6ポイント減の4・1%にとどまっている。政府・与党を批判するばかりで、政権担当能力を示せていないことが大きいと言える。維新も分裂騒動などで、かつての第三極としての存在感は低下している。

 民主、維新両党は先の通常国会でも一定程度の協力はしており、統一会派を組んだだけで支持を集められる保証はない。合流の形態に関しては、民主党の保守系議員や維新は両党の解党による新党結成を主張しているが、民主党執行部は慎重姿勢を崩していない。

「抵抗野党」ではだめだ

 与党の政権運営に緊張感を持たせるには、政権担当能力を備えた「責任野党」の存在が求められる。

 民主、維新両党は、冷戦時代の社会党のような「抵抗野党」であってはならない。現実的な対案を示し、政府・与党と建設的な論議を行ってほしい。

(12月13日付社説)