民主党はまずは党内意見の集約を


 民主党など野党は政府・与党に対し、臨時国会の早期召集を迫っている。

 しかし、民主党内では安全保障政策や環太平洋連携協定(TPP)について意見の対立がある。意見を集約できなければ、国会での建設的な議論は期待できない。

臨時国会召集を迫る

 菅義偉官房長官が「安倍晋三首相の外交日程で最優先しなければならない日程もあるし、(今年の)通常国会は戦後最長となる延長を行った」と指摘するなど、政府・与党は開会に慎重な姿勢を示している。

 これに対し、民主党など野党側は、首相がTPPなどをめぐる国会論戦から「逃げている」と反発している。国会が開かれれば、TPPや政権の経済対策「新3本の矢」などで徹底論戦を挑む構えだ。

 民主党の枝野幸男幹事長は、憲法の規定を使って政府に開会を求める考えを示している。憲法53条は、衆参いずれかで4分の1以上の議員の求めがあれば内閣は臨時国会を召集しなければならないとしており、枝野氏は「使うことも視野に入れている」と述べた。

 確かに内閣改造の直後でもあり、野党が国会開会を要求するのは理解できる。外交日程は窮屈だが、安倍首相は政権の新たな課題として取り組む「1億総活躍社会」の実現について、国会の場で改めて所信を表明する必要があろう。

 一方、先の通常国会で民主党は安全保障関連法の成立阻止のために徹底抗戦を繰り広げた。しかし、こうした戦術に対して党内では「政権担当能力を示せなかった」との不満もくすぶっている。

 民主党は安全保障関連法についても、さらなる議論が必要だとしているが、党内には安全保障をめぐる意見対立がある。岡田克也代表は政権批判の前に、集団的自衛権の行使容認などに関する党見解の取りまとめに全力を挙げるべきだ。そうでなければ、臨時国会が開かれたとしても不毛な議論の繰り返しとなろう。

 岡田代表はかつて集団的自衛権行使を容認する考えを示したこともあり、現在の反対姿勢との整合性も問われる。たとえ反対するのだとしても、日本を取り巻く安保環境が厳しさを増す中、どのような政策が望ましいか代案を明示する必要があるはずだ。

 TPPに関しても民主党は合意を厳しく批判する構えだが、交渉参加を決断したのは民主党政権だ。この問題についても、党内の推進派と反対派の対立は激しい。

政権担当能力を示せ

 岡田代表は「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」の実現を呼び掛ける共産党と選挙協力を進める考えを示した。だが、共産党は党綱領で日米安保条約の廃棄を掲げる政党だ。現在の民主党は危険な方向に向かっていると言わざるを得ない。

 国会では自民党が優位の「1強多弱」の状況が続いている。与党の政権運営に緊張感を持たせるには、健全な二大政党制を実現させる必要がある。野党第1党の民主党は政権担当能力を示さなければならない。

(10月11日付社説)