安倍改造内閣、1億総活躍は家庭の繁栄から


 第3次安倍改造内閣が発足した。主要9閣僚が留任、9閣僚が初入閣、1閣僚が再入閣の布陣は、短命内閣、短命閣僚の繰り返しだった自民党の政権復帰前と比較して安定感がある。

 異例の延長となった通常国会で主要野党が強く抵抗する中、安全保障関連法を制定した直後であり、政権の安定は日本再生に不可欠である。果断に国家の運営に当たってほしい。

「未来へ挑戦」と首相

 安倍晋三首相は内閣改造後の記者会見で「この内閣は未来へ挑戦する内閣だ。少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する」との考えを示して①戦後最大の国内総生産(GDP)600兆円②希望出生率1・8③介護離職ゼロ――に挑戦すると宣言した。

 この「1億総活躍社会」の実現のために掲げた目標は、ハードルが高く達成困難を予想する見方に対し、首相は「20年近く続いたデフレによっていかにデフレマインドが蔓延してしまったのか。日本を覆う自信喪失の根の深さを改めて感じる」と述べ、「少子高齢化は放置できない」と強い決意を表明した。

 外交や安全保障、経済などの政策は、国家ひいては国民の繁栄のためにある。その国民が戦争や自然災害、飢餓にもよらず年々、万単位で減少する。50年後の日本の人口は現在よりも4000万人少ない8000万人台になると国立社会保障・人口問題研究所が推計している。

 民間研究組織の「日本創成会議」は、2040年に全国の約半数の896の自治体で出産適齢期の女性人口が半減し、急激な人口減少によって消滅する可能性があると警告している。このため先の改造では地方創生担当相のポストを設け、今回は1億総活躍担当相を新設し、できるだけ速やかに対策を打つことを首相は明言した。

 詰まるところ「1億総活躍」は1億人の人口を死守することにほかならず、このことは昨年の「骨太の方針」でも掲げられている。希望出生率1・8は当面の目標であり、2を上回らなければ人口は維持できない。

 少子化は戦後の経済成長と高学歴化、より有利な職を求めての都市部、特に東京への一極集中と核家族化、その中で形成された人々の価値観によってもたらされたものだ。

 例えば、この流れの中で女性も高学歴となり大都市圏の企業で仕事をするライフスタイルに憧れを持つようになっている。ここで「女性の輝く社会」に向けた政策を推進すれば仕事で活躍する女性は増えようが、出生率を向上させることはできるのか。男女すべてが結婚しても子供2人の出産では人口は増えない。仕事と出産・育児の両立には様々な工夫がいる。

少子化克服へ意識変革を

 企業にも育児への理解が求められ、テレワークなど新しい働き方の導入も注目されるが、様々な面で社会の在り方の大きな変革がいる。同時に、最終的には子供を産み増やす結婚、そして家族の価値を重視するという国民の意識変革がなければ少子化は克服できない。経済成長による所得増加で若者が家庭を築ける環境を整え、家族支援の政策を打ち出していくべきだ。

(10月8日付社説)