18歳選挙権、国民の義務と責任も教えよ


 選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる公職選挙法改正案が今週にも衆議院で採決され、6月中旬に成立する見通しだ。早ければ、来夏の参院選から実施される。これに合わせて民法の成人年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる「大人の年齢」をめぐる論議も盛んだ。

 公選法改正案が成立へ

 だが、権利には義務と責任が伴う。このことに留意した「主権者教育」や成人年齢論議が欠かせない。安易な権利要求や引き下げ論に与してはなるまい。

 憲法改正手続法(国民投票法)では投票できる年齢を原則18歳以上とし、法律施行までに18歳以上20歳未満の人が国政選挙に参加できるよう公職選挙法や関連法の整備などを定めている。それを受けての今回の改正案だ。その意味で、改憲へのハードルの一つがクリアできると評価されよう。

 これによって新たに18、19歳の約240万人が有権者となり、最初の国政選挙後には地方選にも適用され、最高裁判所裁判官の国民審査や、地方自治体の首長や議員のリコールの際の住民投票などにも投票できるようになる。

 また重大な選挙違反をすれば、成人と同様、刑事裁判を受けさせられる。このことでも明らかなように権利には責任が伴うのは当然のことだ。国の政治の在り方を決め、それを実行できる「主権者」たるには、それ相応の義務と責任を果たすべきであることを銘記すべきだろう。

 だが、18歳投票は論議抜きで決められた経緯がある。2007年に国民投票法が成立した際、民主党の賛成を取り付けるため同党に妥協し18歳投票権が盛り込まれた。これを後付けするために法制審議会が18歳成人を適当とする答申を出したが、引き下げによる問題点も指摘し、その後、論議は棚上げにされてきた。

 成人年齢に関連する法律は公選法や少年法のみならず、喫煙や飲酒の禁止法のほか、銃刀法や競馬法(馬券購入)など多数に上る。成年になれば「親権」から離れ、自動車購入などのローン契約や消費者金融からの借り入れも可能になる。

 ところが、18、19歳の若者の半数以上は学生だ。18歳から飲酒や喫煙を認めれば精神・肉体的な悪影響があるばかりか、性風俗分野での低年齢化も招き、有害情報による被害も拡大するといった危惧の声も少なくない。それで反対論も根強い。18歳投票権を実現するからといって、横並びに「大人」とせず、個々に慎重に検討すべきだろう。

 世界ではほとんどの国が18歳成人だが、それは国民の義務と深く関わっている。米国では1960年代にベトナム戦争が始まると「18歳で徴兵されるのなら、選挙権もないとおかしい」との論議が起こり、18歳選挙権が導入された。欧州やアフリカなどの新興国の18歳成人も同様の理由からだ。

 権利意識だけ持たせるな

 来夏にも予想される18歳投票を控え「主権者教育」が急がれるが、それには子供たちに権利だけでなく、義務と責任についてもじっくり考えさせる教育が必要だ。安易に権利意識だけを持たせてはなるまい。

(6月1日付社説)