安保国会、ヤマ場を丁寧に越え法整備を


 1月26日に始まった通常国会は、平成27年度予算が成立したことで後半国会に移った。最大の焦点は、集団的自衛権の行使を可能にすることなどを含んだ安全保障関連法案の成立だ。わが国の安保体制にとっても大きな節目を迎えることになる。与野党の激突が予想されるが、安倍晋三首相はこのヤマ場を丁寧な説得に努めて乗り越えなければならない。

国民の命と暮らし守る

 また、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定を踏まえて安保関連法案の提出を予定しているが、首相は提出の時点で法律の意義や必要性について国民に直接、訴え掛けることも必要だろう。

 前半国会では予算に関する質疑よりも、「政治とカネ」に関する閣僚の疑惑追及が目立ったが、民主党側にも同様の問題が発覚し不完全燃焼に終わった。下村博文文部科学相の支援団体からの資金問題にも多くの時間が割かれたが、週刊誌報道に乗った程度の確証のない質問の繰り返しにより予算の成立が遅れたことは遺憾であり、野党側は猛省すべきである。

 安倍首相は予算成立後、「この国会を『改革断行国会』と位置付けている。農協改革など大きな改革を進めていく。安保法制にもしっかり取り組んでいきたい」と語った。確かに、政府が成長戦略の柱と位置付ける農協改革法案や労働者派遣法改正案などの対決法案がめじろ押しで、緊張感を持ち続けなければならない。与野党には建設的な論戦を望みたい。

 その中でも最も審議時間を求められるのが安保関連法案となろう。8日のカーター米国防長官との日米防衛相会談で中国の海洋進出を念頭に「東シナ海などでの力による現状変更の試みに反対する」ことで一致。27日の日米外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)で日米ガイドラインの再改定で正式に合意することになった。首相訪米のタイミングに合致しており、「日米両国が同盟において、世界の平和と安定のために一層、主導的な役割を果たしていくというメッセージ」(首相)の発信効果は大きなものとなろう。

 ただそれに対して「審議も経ずに方向性を決めるのは国会軽視」とか「米国からの要求を無理筋で理屈づけした」との批判も国会内から聞こえてくる。こうした誤解を解くところから始めなければならない。政府・与党は来週、法案協議を再開し、未調整の個所の内容を詰めて5月の中旬頃、国会に提出したい考えだ。6月24日までの会期を8月中旬頃まで大幅に延長をしてでも成立させることが肝要だ。安保法制の整備は、国民の命と暮らしを守るための土台となるからである。

各党が改憲案を示せ

 首相に求めたいのは、安保論議をする上で不可欠な憲法改正の必要性についても言及し、国会での議論を深めるよう主導することだ。民主党幹部は自民党の改憲案を「撤回」した上で議論をする考えはないかと首相に尋ねたが、その前に民主党自身が改憲案をまとめるのが筋だろう。5月20日には党首討論が実現する予定だ。その場で各党の改憲案を聞きたい。

(4月11日付社説)