安保法制整備、従来の解釈を引きずるな


 民、公明両党が「安全保障法制整備の具体的な方向性」について合意した。法整備の際、「国際法上の正当性」等の3原則を大前提と規定。その上で「グレーゾーン」への対処、日本の安全に資する活動中の他国軍への支援、憲法9条下で許容される自衛措置等の5分野で、法整備を実施する方針を打ち出している。

 若干の改善点はあるが、依然として55年体制下での法解釈を引きずっている。

 求められる柔軟な対応

 そもそも国家の安全確保のため、すべてに法規定で対応しようとすることは困難だ。大陸法系、英米法系の法システムのいずれを問わず、成文法は硬直性を持つ。

 このため、諸外国では基本的枠組みだけを法で決め、詳細は政令や運用マニュアルで処理している。グレーゾーンは法での対応に無理がある。

 国家の危機に対処するには、直面する流動的事態に柔軟に応じなければならない。第一に、危機的情勢は「弱・中・強」といったようにエスカレートするのではなく、無段階に変化する。また、法は公表しなければならないから、敵対的国家、団体は法規定の間隙や裏をかいて行動するのが常識である。

 次に、我々が安保法制論議をする際に留意すべきは、自衛隊の行動は国際社会で実施されるものであり、その法的論拠だけでなく義務も「国際武力紛争法(戦争法)」の制約下にあるという点である。逆に言えば、国内法で許容しても武力紛争法で禁止されている行動は戦争犯罪となるのだ。

 合意文書では、自衛隊が国際社会で行動する際の国際法上の正当性は「国連決議または関連する国連決議等」に基づくとしている。

 ただ拒否権を持っている国連安保理常任理事国が関与したケースでは、安保理決議が採択されることはまずあるまい。

 それは今回のロシアによるウクライナ南部クリミアでの軍事行動を見れば明らかだ。沖縄県・尖閣諸島の問題でも、安保理に何らかの対応をも期待できないことを承知しておくことが肝要である。

 また、自衛権を行使する国だけでなく侵略国も武力紛争法の順守が義務付けられている点も忘れてはならない。同時に、一般国際法、国連憲章などでの自衛権の承認は「所期の自衛の全う」を保証するものではない。つまり、基本的に被侵略国が自らの防衛力によって侵略を排除することを認めているに過ぎないのだ。

 憲法9条下で許容される自衛措置をめぐっては、55年体制下での9条解釈を是正する必要がある。

 国際社会では通用しない

 一方、「戦闘が行われていない地域」での後方支援や武器以外の物資補給は「武力行使に該当しない」との、日本だけで通用する解釈が依然として大前提とされている。

 だが、現代戦では前線・銃後はない。また、国際社会では補給活動も武力行使の重要な部分である。その覚悟なくして、国際平和の担い手となることはできないのだ。

(3月23日付社説)