国会を改革し国益追求する新ルールを


 首相や閣僚の国会出席義務を緩和することなどを柱とした改革論議が国会での焦点の一つとなっている。日本の首相は他国の首脳と比べ国会審議への出席日数が突出して多く国益を追求する外交活動の妨げとなっている。与野党は大いに工夫をし国民の負託に応えられるよう新たな国会ルールづくりのための協議を開始すべきである。

首相の出席義務緩和

 自民、公明両党はこのほど、首相の衆参両院の委員会出席を原則として予算委員会に限定するなどの改革案をまとめた。理由は「国際社会におけるトップリーダーの地位を獲得するには、首相や大臣による積極的な外交が不可欠」というものだ。

 2011年に首相が国会に出席したのは120日余りで、フランスやドイツの約10倍、英国の3倍余と突出して日本が多かった。野田佳彦首相の時代には国会の制約から日程を短縮して国際会議に出席したこともあった。しかし菅義偉官房長官が「いまや首脳外交の時代」と語ったように、安倍晋三首相の訪問国は首相就任から既に23カ国に及んでいる。

 その成果の一つは、軍事路線を突き進む中国の進出に対して国際的な理解を深め警戒心を共有する国を増やしてきていることだ。

 激動する国際情勢の中で、日本のリーダーが世界を飛び回り誤解があればそれを解き、自国の主張をアピールすることは待ったなしの重大事である。

 安倍首相は28日からトルコを再訪する。5月に訪れたばかりだが、トルコを戦略的に重要なパートナーと位置付けている首相の強い意向からで、来月中旬にはカンボジア、ラオスを訪れる。国会改革を先取りするような積極姿勢だ。

 こうした首相が動きやすい環境をつくる必要から、民主党は自らの政権時代、首相や閣僚の出席義務の緩和などを柱とする改革案をまとめたことがあった。政権を担当した経験を持つ政党である以上、積極的に賛成してもいいはずだ。「与党からどういう案が出るかを見て(具体案を)議論する」といった受け身の姿勢では建設的で創造的な意見集約はできまい。

 首相の委員会レベルでの負担を軽減する分、党首討論の充実が肝要だ。与野党は、週1回の党首討論の開催を申し合わせたが、同じ週に本会議や予算委員会などに出席する場合には開かれなかった。現行で45分間の討論時間をもっと増やすことも考慮すべきだ。

 与党改革案は「党首討論の充実」とだけ記して具体策は示さなかったが、この点では民主党や日本維新の会と共通の認識がある。協議に誘い込むために具体策をあえて外したのだろう。週1回の習慣化、45分を60分に延長することなどで合意を得るよう協議を急ぐべきだ。

 党略超え議論深めよ

 国会改革では、首相の施政方針、所信表明演説の衆参一本化や通年国会の是非など他にも論点は多い。だが議論ばかりに時間をかけてはならない。与野党は、国益最優先を念頭に置き、次期通常国会から実施できるよう党略を超えて議論を深めるべきである。

(10月27日付社説)