参院1票の格差、問われる衆参両院の在り方


 「1票の格差」が最大4・77倍だった2013年7月の参院選の議員定数配分について、最高裁は「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあった」として違憲状態だったとの判断を示した。

最高裁が「違憲状態」

 裁判官15人中11人の多数意見で、他の4人は違憲とする反対意見を述べた。うち1人は、一部の選挙区について直ちに無効にすべきだと指摘した。「1票の格差」訴訟の最高裁判決で、裁判官がこうした判断を示したのは参院選では初めてだ。

 これで衆参両院の選挙がそれぞれ2回連続で「違憲状態」と判断されたことになる。最高裁は今回、速やかな選挙制度の見直しを求め、改めて国会に抜本改革を強く迫る形となった。

 しかし、衆院では格差是正に向けた選挙制度の改革論議が難航し、具体策の検討は議長の諮問機関「衆院選挙制度に関する調査会」(座長・佐々木毅元東大学長)に委ねられたが、結論が出る前に解散された。

 参院でも今年4月、与野党でつくる選挙制度協議会で脇雅史自民党参院幹事長(当時)が、都道府県単位の47選挙区のうち「鳥取と島根」「徳島と高知」など隣り合う22の選挙区を「合区」し、全体の選挙区を36にするなどの抜本改革案を示した。だが各党の主張の隔たりが大きく、意見集約は難しい状況だ。

 憲法は「法の下の平等」(14条)を保障しており、今回の最高裁の判断はこれに基づくものだ。かつては「衆院3倍未満、参院6倍未満」の格差が合憲ラインとされたが、近年は格差の常態化が問題視され、この枠にとどまらない厳しい判断が示されてきた。

 参院の選挙区は都道府県単位で、近年は都市への人口集中により、選挙区ごとの議員1人に対する有権者数の差が拡大している。10年参院選の格差が最大5・00倍に広がったことを受け、選挙区定数を「4増4減」する法改正が12年11月に行われ、格差は縮小したが、最高裁の判断は変わらなかった。

 もちろん、格差が大きければ是正する必要があろう。だが、裁判所が「投票価値の平等」の原則をあまりにも厳格に適用することには疑問が残る。「1票の格差」だけを基準にして制度改革を進めれば、過疎地選出の議員が減少し、地方の民意が伝わりにくくなりかねない。その意味で、今回裁判官の一人が「即時無効」の判断を示したことには懸念を覚えざるを得ない。

 米国の場合、下院は各州ごとに人口比例で定数を割り振るが、上院は各州2人で「1票の格差」は考慮されない。

 格差是正や選挙制度について論議する上で欠かせないのは、衆参両院の在り方をどう考えるかということだ。参院の場合、格差是正にこだわり過ぎれば「衆院のカーボンコピー化」が進み、独自性がかすんでしまうという現行憲法に起因する根本問題を抱えている。

改憲を見据えた論戦を

 今回の判断を受け、当事者の参院議員が論議を深めるのはもちろん、来月に投開票が行われる衆院選でも衆参両院の役割分担など、憲法改正も見据えた論戦を展開してほしい。

(11月27日付社説)