解散・総選挙、安保や教育についても論戦を


 衆院が解散され、12月2日公示-同14日投開票の日程で総選挙が行われる。

 経済政策が主要な争点とされているが、それにとどまらず、日本の将来を大きく左右する安全保障や教育政策についても各党は議論を戦わせてほしい。

「アベノミクス解散」

 安倍晋三首相は「アベノミクス解散」と命名した。総選挙では、来年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを2017年4月に延期したことの是非を含め、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の成果が問われる。

 安倍首相は解散決定の閣議で「デフレからの脱却への糸口は見えている。この道しかないということを国民に訴えて、理解を得る努力をしていく」と述べ、アベノミクスの継続を訴えて信を問う考えを強調した。

 今年4月の消費増税後、国内の景気は低迷している。その意味では、この時期の選挙に疑問がないわけではないが、実施する以上、経済再生に向けた道筋を国民に明示する必要がある。野党もアベノミクスを批判するのであれば、現実的な代案を示すべきだ。

 ただ、日本の抱える課題は経済だけではない。中でも、強引な海洋進出で現状変更を試みる中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮を念頭に、安保体制を強化することは急務だ。

 特に中国は昨年11月、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定し、中国機が航空自衛隊機に異常接近する事態も発生した。中国公船による尖閣周辺の領海侵犯も常態化するなど、日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。

 安倍政権は今年7月、集団的自衛権の行使を一部容認し、これを柱とする安保法制整備を年明けの通常国会で行う。日米同盟の抑止力を向上させるための決定だ。

 行使容認には反対の声も少なくないが、安倍首相には各党との論戦を通じて、その理由について丁寧に説明することが求められよう。

 野党第1党の民主党内では、集団的自衛権行使について意見の対立がある。民主党政権時に党内抗争で政権運営が迷走したことを国民は忘れていない。対立を克服できなければ広範な支持を得ることはできまい。

 国際貢献の姿勢も問われる。安倍政権は昨年12月に決定した「国家安全保障戦略」の中で「積極的平和主義」に基づき、国際社会の平和と安定の確保に寄与する方針を掲げた。武器や関連技術の海外移転を原則禁じてきた武器輸出三原則に代わって、条件を満たせば認める「防衛装備移転三原則」を決めたのも、その一環だ。

 安倍首相は米国のほか、オーストラリアやインドなどとの関係強化に努め、中国を牽制してきた。こうした姿勢をどう評価するかも焦点となる。

道徳が正式な教科に

 中央教育審議会は今年10月、小中学校で道徳を正式な教科に格上げするよう答申した。早ければ18年度にも検定教科書が使われるようになる。

 国を支える心豊かな人材を育てるための教育の在り方も問われている。

(11月22日付社説)