衆院解散、日本の経済浮揚へ展望を開け


 衆院がきょう解散される。「日本を取り戻す」とのスローガンを掲げ、2年前の総選挙で政権を奪取した安倍晋三首相は、与党の自民、公明両党を合わせて326議席という圧倒的多数を率いている。

 だが、厳しい経済指標から来年10月に予定された消費税率10%への引き上げを1年半延長し、これを理由に民意を問う決断をした。経済浮揚につながる展開を望みたい。

 デフレ脱却に強い決意

 解散を表明した記者会見で首相は、日本経済を負のスパイラルに陥らせたデフレからの脱却に強い決意を示し、安倍政権の経済政策・アベノミクスについて国民の審判を仰ぐ理由を語った。7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で1・6%減と民間予測を下回っており、消費税の再増税延期もやむを得ない。

 しかし、このような状況下でも政権には衆参で安定多数の勢力があり、首相が強い指導力を発揮してアベノミクス第3の矢である成長戦略を軌道に乗せていく選択もできたはずだ。解散・総選挙の決定には、いま一度多くの有権者の支持を得て政策推進の力としたいという首相の強い思いもにじむ。

 かねて指摘されてきたことだが、景気回復の途上とはいえ、消費増税の反動はこれを帳消しにしてしまいかねない状況だ。安倍政権は難しい舵(かじ)取りを迫られている。

 再増税は2017年4月に延期された。一方、来月の選挙で当選する候補者の任期は18年末までとなる。安倍政権の継続を有権者が選択すれば、増税による景気腰折れ回避のための経済政策を強力に進めることができるに違いない。

 自公政権が日本の経済を左右する重大局面の乗り切りを図るため、総選挙でいち早く有権者の信任を得られれば、国際社会・市場から好感されよう。

 「大義なき解散」「争点なき選挙」と一部に批判もあるが、経済再生のシナリオに不安要素がある中で、日本の今後4年間の政権を明確に決定すること自体が焦点だ。

 重要なことは、このところ日本の経済は政権と浮沈をともにしていることだ。民主党政権時代の円高株安、デフレ経済でベースアップが絶望視されてきた春闘の空気が、安倍政権の誕生で変わった。

 ただ、国民は長期のデフレ不況に悩みながらも市場を席巻してきた格安商品に慣れ、低価格が常識化したため、円安や増税による価格上昇に抵抗感があるのも確かだ。

 特に地方経済はアベノミクスの恩恵が浸透するまで時間がかかることから、地方創生法制定を機に地方における成長戦略を軌道に乗せていかなければならない。

 野党は前向きに臨め

 野党は挙(こぞ)って首相の衆院解散について批判している。しかし、前回の総選挙で大敗北を喫した民主党などにとっては議席増のチャンスでもあり、前向きに臨むべきではないか。

 予想よりも早い政権選択の選挙であるが、政権構想を明らかにして堂々とした論戦を挑んでほしい。

 (11月21日付社説)