臨時国会、本格論戦 与野党ともやる気十分


 いまの日本の総理大臣の権限は非常に強大で何でもできる立場にある。しかしその強力首相がその権限をやたらに振り回すことはほとんどない。

 その権限を静かに抱いたままダマって立っている。無言の権力者も怖い存在だ。解散権を握っている首相が解散権をひねりながら何も言わずにダマっている。野党や反対党から見るとこんな恐ろしい首相はいない。ダマったままいきなり解散権を抜く恐れがある。抜かれたら最後だ。選挙の結果負けたらみじめな姿になる。路頭に迷っても不思議はないし、誰も助けてくれない。だから解散は真っ平御免だ。これは朝野の別なく現役議員の議員心理といわれる。

 しかし永田町を見渡すと誰もそんな心配をしている者はいない。みんなのんきな顔をしている。それは現役議員が横着なのではなく、解散権所有者の首相がそこまで考えていないためだ。

 なぜ解散権をチラつかせないのか。野党はいろいろとムチャをするし、危ない橋も渡る。しかし解散の恐れを招くようなところまで踏み込むことはない。そこに行くまでにムニャムニャと逃げてしまう。いまの永田町が比較的に平穏無事なのは多分に解散に対する与野党の思惑の違いのせいでもある。

 しかし、ある日突如として解散含みの重大局面に突入する心配は依然として続いている。そうなると乱戦混戦を免れない。永田町はまだ足場が固まっていないし、イザという場合の長期戦略などはどの党も準備していない。各党とも政権欲しやと手を伸ばしているが、それに伴う政権工作は穴だらけだ。

 昔の手だれの猛者たちがこの状態を見たら手に唾して喜ぶに違いない。天下取りには格好の時だ。頭ひとつの働きで政権を手中にすることが不可能ではない。しかしいまの永田町にはそんな気のきいた策士は不在だ。宝の山に入りながら宝を拾うことを忘れている。

 しかし静かに待つということも重要な戦略のひとつだ。ひとたびその機が訪れたらみんなその気になって立ち上がる。その機があるとすればこんどの秋の臨時国会がそれだ。

 そろそろ退屈な平穏時代も尽きようとしている。4カ月ぶりの国会での本格論戦がスタートした。

 消費税増税、成長戦略、日本版NSC(国家安全保障会議)、特定秘密保護法案、原発汚染水問題やTPPなど、今週から始まる予算委を控え与野党ともにやる気十分だ。ここらがいつもの臨時国会と違うところだ。

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