国会党首討論、民主党は具体案示し改憲問え


 今通常国会で初めての党首討論が行われ、安倍晋三首相と民主党の海江田万里代表らが主に集団的自衛権をめぐって論戦した。海江田氏は集団的自衛権の行使容認は憲法改正によるべしと主張したが、憲法解釈変更の閣議決定に意欲を示す首相は「民主党の立場がよく分からない」と切り返した。改憲を唱えるなら具体案を示す必要がある。

 憲法解釈変更に反対

 中国の力による現状変更の動きが南シナ海、東シナ海で激化し、北朝鮮による不測の事態も懸念される中、集団的自衛権行使容認に政府は動きつつある。

 海江田氏は、冒頭で民主党の「ネクスト・キャビネット(次の内閣)」が示した「憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認は許されない」との見解に言及し、今国会会期中に首相が閣議決定を行う指示をしたことを「拙速」と批判した。

 では、民主党は改憲でこれを行う意思があるのか。ただ反対のための方便として改憲を持ち出したとしか思えない。

 このような姿勢では、改憲案を持つ自民党の総裁である首相から改憲について発言を引き出すのは無理があり、行政府の長として現憲法下で行おうとしている解釈運用に理解を求める内容に留まらざるを得ないのだ。

 だが、海江田氏も指摘したように国民投票法改正案は13日にも成立するのであり、改憲発議は具体的な国会の日程に乗せることもできる。改憲手続きは内閣ではなく国会と国民によって行われる。民主党が集団的自衛権をめぐり内閣の憲法解釈を批判するなら、まずは自らが行使を容認するか否かを明示し、これが必要であるとする立場でなければ改憲による行使を迫ることはできないはずだ。

 ところが、民主党には集団的自衛権行使を否定する議員らもおり、党として是非を明確にしていない。首相は討論の中で「みんなの党や維新の会の諸君は、難しい問題だが、あえてしっかりとその立場を国民に表明しているではないか」と反論したが、安全保障上の懸案について民主党だけでなく各党は立場をはっきりさせる必要があろう。

 首相は「近隣諸国で起きた紛争から逃れる邦人を輸送する米国の艦船が襲われた際に自衛隊が守れなくてよいのか」と述べた。海江田氏は、この場合の集団的自衛権行使に「日本が戦闘行為に加担する、日本が戦争を始めるということ」だなどと述べ、これまで戦死者がいなかった自衛隊が血を流す懸念を強調したが、あまりに平時の発想にとらわれた議論だ。

 自衛権は個別的であれ集団的であれ有事の際に行使されるものだ。極限の状況下ではどの国の軍隊の兵士も死を覚悟するが、有事を起こすためではなく、有事に備え、抑止するための議論ではないのか。

政権担当能力示す気概を

 民主党には旧社会党仕込みの反戦・護憲イデオロギーの枠に嵌(は)められた発想が変わることなく根を張っている。

 党首討論は野党が政権担当能力を与党以上に示す気概を持って臨むべきであり、外交・安保がアキレス腱である民主党は有効な代案を提示していくべきである。

(6月12日付社説)