国会改革、戦術的対決以上に国益増進を


 与野党7党が国会改革について協議し、毎月1回の党首討論、首相の委員会出席の負担軽減などを秋の臨時国会から衆議院で先行させていくことで一致した。国会運営をめぐっては古い慣例のほか、政治の停滞を生んだ不毛な対立の例を踏まえ、より国益を増進できる国会となるよう改革を続けてほしい。

多過ぎる首相の出席日数

 自民、民主、公明、日本維新の会の4党が先に合意した国会改革案の中で、首相の委員会出席軽減を打ち出したのは、首相の国会に拘束される時間が各国と比べて非常に長いことが挙げられる。

 民間政策集団「日本アカデメイア」の有志がまとめた「国会改革に関する緊急提言」の参考例によると、日本の首相の年間国会出席日数は127日(2011年)に上る。これに対し、仏首相の議会発言日数は12日(07年7月から08年7月)、英首相は36日(08年12月から09年11月)、独首相は11日(09年11月から10年11月)だ。主要閣僚も同じ程度である。

 首相や閣僚が出席する予算委員会などでは、質疑や答弁も似通った内容を何度も繰り返す形式が多々見受けられる。国会運営の合理化を図り、内閣がより行政の仕事に集中できるようにすることが、議院内閣制における政治主導を進める上で有効となろう。

 首相や閣僚の委員会出席の負担が重いと、特に外交面で弊害を生むことになる。意図的な反日宣伝を繰り返して日本の孤立化を企む中国指導部が登場したこともあり、外交課題への対処が今まで以上に求められている。わが国は正確な対日理解に向けて国際社会に活発に働き掛ける積極的な外交を展開していかなければならない。

 このため、日本の顔となる首相や閣僚の委員会出席軽減は、衆院だけではなく参院においても早期に実現する必要がある。首相らが外交・行政での仕事に集中する時間が増えれば、出席軽減の代わりに毎月行うことになる党首討論のやり甲斐(がい)も増すという相乗効果を期待したい。

 今回の国会改革で与野党の合意が得られたのは、07年参院選から13年参院選まで一時期を除き、参院で与党が少数になる「ねじれ国会」が続いたため、自民・公明、民主とも政権を担当した時に、首相が国会に釘付けにされる不毛さを経験しているからだ。

 野党には与党が横暴とならないように監視する役目がある。が、野党は来る選挙に勝つために国会において政府・与党の成績を下げようとし、反対する法案の審議進行を妨げようとする。やむを得ない面もあるが、程度を超えると戦術的対決が国政の停滞を招き、国益を損なうことになる。

 国会改革に同意しなかった生活、社民、共産には対決路線に走りがちな党首がいたり、イデオロギー的な対決を伝統とする党風がある。過去には連日の審議拒否、座り込み、牛歩などの抵抗戦術をしばしば取った。

さらなる改革進めよ

 改革案をまとめた4党と、みんなの党、結いの党、新党改革の7党でさらなる改革を進めていくべきだ。

(5月29日付社説)