野党の対外政策 政府の足を引っ張るな


 日本は民主主義国家の一員だ。しかし単なる一員ではない。その主張や行動には民主国家としての実行の裏付けがある。少々大袈裟に言えば、日本はその意味でも世界から尊敬されていると言えよう。

 しかし、日本国民から見るとそれほどではない。あんまり外国からホメられると、きまりが悪いし、こそばゆくもある。多くの説明は不用だ。永田町を見ればすぐ分かる 。

 国会運営は与野党の共同責任だ。しかし現在ただ今展開されている与野党の院内活動を見ると、与党より野党の行き過ぎが目につく。野党は政府与党と反対の立場に立っている。だから両者仲が悪いのは当たり前だ 。

 与野党の対立は明治時代の方がはるかに激しかった。本会議場の与野党のケンカ沙汰は日常茶飯事といわれたものだ。しかしいま思っても感心するのは、国会内でいくら与野党が取っ組み合いを演じても、外国に対してはいつも与野党一本になっていたことだ 。

 日清、日露戦争に際しても、与野党はいつもイガミ合っていたが、こと相手国との対応になると、日頃のうらみつらみはどこへやら。政府と国会はぴたりと呼吸が合い、歩調が揃った。 戦力の劣る日本が、当時の大国の清国やロシアに勝ったのはそのせいかもしれない。国論の一致が何よりも大切なのだ 。

 いま日本は戦争とは無関係だ。しかし無関係と言っても無視は許されない。少なくともいま繰り広げられている日本外交の足を、同じ日本人が引っ張ることがあるとすれば、断じて許すわけにはいかない 。

 外交に不満があれば国内で議論すれば足りる。何も外国にまで出向いて行って、日本の悪口をいう必要はない。これを認めようとしない日本人は日本人に非ずだ 。

 ところがそんな日本人がいるのだから驚く。あえて名指しすれば日本の野党がそれだ。野党の党首クラスが外国に出向いて祖国の首相の批判をしてはばからない。これでは民主国家の名前は返上だ。こんなつげ口を続けていると、世界の民主国家として尊敬されている日本の評判の落下は免れない 。

 野党だって日本の国際的立場が下落するのは本意ではないだろう。それが分かっているなら党利党略本位から離脱すべきだ。野党は昔と違って、いつまでも万年野党を決め込んでいるわけにはいかない。選挙の次第で政権が舞い込んでくる可能性もある。また掛け声だけの政界再編成だって、こんどは実現するかもしれない事情もないわけではないからだ。

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