里帰り工作 渡辺代表が自民に急接近


 永田町では与党が揺れ野党が揺れている。一口で言えば自民党の党内抗争は権力闘争に外ならない。この権力闘争に勝った勢力が次代の政権を握る。権力闘争は政権抗争の別称だ。

 自民党はいま政権の座には坐っている。そして政権意識も健在だ。さらに保守本流を以て自ら任じている。政権はあちこちに飛び火して、自民党の膝に止まったままではなく、不安定極まる。しかし自民党は必ず政権が自民党にとどまると固く信じている。しかし心意気だけでは物事は進行ストップだ。その心意気を実現させるための実力が必要となる。その実力があるかと反問すれば、「ある」ときっぱり言い切れない自民党だ。これでは甚だ頼りない。

 一旦自民党に愛想を尽かして飛び出したが、結局どこに行っても同じだ。そういう手合いが各党の片隅でひっそり暮らしている。しかしいまさら嘆いても手遅れだ。といったところで、帰る場所もない。帰心矢の如き気持ちは募るばかりだ。これでは思案に暮れるしかない。

 しかし、ひとりふたりでポツポツ帰るのは体裁も悪いし、恥ずかしい気もする。そこで気がついたのが集団帰参だ。大勢で景気よく帰れば勇気も出るし、言いたいことも言える。

 ここで手を挙げたのがみんなの党の渡辺喜美代表だ。渡辺氏はさきに旧自民党で「こんな党にいられるか」とタンカを切って離縁状を叩き付けた。しかし政党のトップとして永田町で散々苦労した挙げ句やっとたどり着いた結論は、「やっぱり古巣に帰ろう」だった。ひとたび望郷の念が燃え立つと居ても立ってもいられない。猛烈な里帰り工作が始まった。

 アベノミクスをホメちぎり、体当たり的急接近を図った。だから政策や法案には協力を惜しまない。例えば憲法解釈変更による集団的自衛権行使についても協力を申し出る。

 こんなサービスをさんざん見せられては、意気投合しないわけにはいかなくなる。両者が俄然親しくなり、昨日の敵が今日の友と化した感じだ。しかし、こんな不自然な付き合いは長続きしない。

 しかし諦めるのはいつでも可能だ。当事者として最後まで粘るのがスジであることはいうまでもない。与党も野党も永田町で揺れているがその原因を尋ねるとみんな他愛がない。与党も野党も政権を意識し、政権の座に坐ることを夢見ている。国民の存在は目にも留めない。

 こんなことでは政権交代しても同じことの繰り返しだ。

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