各党代表質問、政権時の失政に反省ない民主


 安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が行われた。冒頭の質問に立った民主党の海江田万里代表は、安倍政権に「経済」「外交」「国の在り方」の三つのリスクがあるとして追及した。

 だが、これらに伴う困難は、かつての民主党政権による失政が響いていると言っていい。

 中韓との関係で政権批判

 民主党は野党第1党として、政権を担った経験を生かして国益につながる代案を提示し、政権復帰を期待されるような存在感を示すべきだろう。しかし、残念ながら海江田代表は「反対野党」の立場に終始し、特に外交問題では、自分たちが政権の座にあった時に悪化させた中国や韓国との関係について、何の責任もないかのような追及ぶりであった。

 海江田氏は「村山談話、河野談話を素直に認め、戦前の侵略と植民地支配に反省の気持ちを率直に表明すべきだ」と主張した。だが、両談話は安倍内閣も踏襲している。海江田氏がNHK会長の従軍慰安婦に対する発言について「首相の思いが乗り移った」などと述べたのは言いがかりに等しい。

 民主党政権下では村山談話を踏まえて戦前の植民地支配を謝罪し、閣僚の靖国神社参拝も見送られた。しかし、中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権主張を強め、韓国の大統領が島根県・竹島に上陸することで両国との関係は悪化した。

 これは、両国の我が国への攻勢が単に謝罪を繰り返しても抑えられないほど強まっていたことを、民主党政権が見落としていたことに起因している。特に中国が力による地域秩序の現状変更を目論(もくろ)み、我が国や東南アジア諸国の周辺にまで海洋進出することに対し、民主党政権は発足当初から警戒感が弱かったと言える。

 こうした経緯があるにもかかわらず、歴史問題で安倍政権を追及する姿勢は与野党対立を深めるだけだ。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」をめぐっても海江田氏は、円安で燃料費が高騰し、国民生活を圧迫していると批判した。だが、エネルギー問題をめぐっては「原発ゼロ」を実績にしようとした民主党政権の弊害が大きいのではないか。

 東日本大震災と福島第1原発事故という未曽有の災害で国民の不安がある時こそ、全国の原発の中でも安全なものは安全だと説明し、冷静な対処で安価で安定した電力を確保することが必要だったはずだ。

 全ての原発が稼働を停止した結果、液化天然ガスなど火力発電用燃料の輸入が急増し、昨年も11兆円を超える赤字の主たる要因になった。安倍首相は、原発について「簡単にやめるわけにはいかない」と述べたが、電気料金を下げて企業収益の改善を図ることは、賃上げにも繋(つな)がろう。

 改憲への機運高めよ

 また、憲法改正については、日本維新の会国会議員団幹事長の松野頼久氏の質問に対し、首相は「着実に取り組んでいきたい」と抱負を述べた。国会各党派と共通認識を深める協議を通じて、改憲への機運を高めてほしい。

(1月29日付社説)