通常国会開幕、問われる連立政権の真価


 会期が6月22日までの通常国会が開幕した。安倍晋三首相は施政方針演説で今国会を「好循環実現国会」と位置付けたが、経済再生に向け景気回復基調を維持できるのか。

 また、集団的自衛権行使をめぐる憲法解釈の変更問題で与党の自民と公明両党に違いがあるが、それを乗り越えられるのか。連立政権の真価が問われる国会となろう。

公明への丁寧な説得

 安倍首相は演説で、「この国会に問われているのは『経済の好循環』の実現だ」と語り、政府、労働界、経済界が一体となった「チーム・ジャパン」で企業収益を賃上げや消費拡大につなげデフレ脱却を目指す考えを表明した。

 4月に消費税の税率が8%に引き上げられることで景気が腰折れする懸念が指摘されている。それを回避するために、2013年度補正予算案と14年度予算案の早期成立を図る考えだ。しかし、これがうまくいかなければ来年10月に予定されている消費税率10%への再引き上げにも影響が出ることは間違いなく財政再建の見通しは立たなくなる。適切な「経済対策」により持続的な経済成長を確保することが求められる。

 後半国会の最大の焦点は、集団的自衛権行使のための憲法解釈見直しができるか否かだ。これに関して、有識者会議が4月にも答申を提出する予定だが、首相は演説で「報告を踏まえ、対応を検討する」と語るにとどめ踏み込まなかった。しかし、礒崎陽輔国家安全保障担当首相補佐官は集団的自衛権の行使容認を通常国会中に実現したいとの考えを示している。

 これに公明党が反発している。しかし、集団的自衛権行使容認は、日本を取り巻く安全保障環境を考えれば、急がれるべきである。米国側が期待する日米同盟強化の柱だ。日米の新たな役割分担を定める日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定を年末に行うためには、それまでに行使が容認されていることが不可欠なのだ。

 首相も自民党も、公明党に対して丁寧な説得に努めなくてはならない。権利を行使するかしないかはその時の政府の判断次第、という歯止めを掛けた論法で理解を得ることが肝要だろう。有事法制や自衛隊のイラク派遣の際にも自公連立政権の真価が問われたが、今回も見解の差を乗り越えるという試練が待ち構えている。

 その一方で政府・自民党は野党対策にも力を注ぐべきだ。みんなの党と日本維新の会は、集団的自衛権の行使容認に賛同し、政策によっては政権に協力する姿勢を示している。党派を超え国家の安全保障を最優先させることが大切だ。

建設的な論戦姿勢を

 施政方針演説など政府4演説に対する衆参両院での各党代表質問は28日から行われる。野党側は野党共闘の構築ありきであってはならない。民主党は特定秘密保護法の廃止法案を提出するなど安倍政権に対決姿勢で臨む構えだが、建設的な姿勢が肝要だ。今国会には、憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案などの重要法案も提出される。論戦の深化を求めたい。

(1月25日付社説)