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治安か普及か問われる民泊


 住宅の空き部屋を利用して旅行客らを有料で泊める「民泊サービス」の運営を合法化した住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月から施行され、民泊のあり方が大きく変わる。国は民泊の「健全な普及」を目指すが、地域住民の安全を確保したい自治体が運営に制限を課す条例案を打ち出しており、民泊の拡大には逆風となりそうだ。(政治部・岸元玲七)

事業者参入減退を懸念/苦情反映し規制上乗せ
治安か普及か問われる民泊

 民泊の運営には旅館業法に基づく許可が必要である。消防法などの基準が厳格で、取得に手間や費用がかかる。6月からの新法では、営業日数が年間180日に限られるが、届け出制にしたり、住宅地でも営業ができるようになるなど規制が緩和される。

サムライハウス幸村荘

大田区の特区民泊「サムライハウス幸村荘」(同施設提供)

 民泊サービスは、物、サービス、場所などを、多くの人と共有するなどして利用するシェアリングエコノミーの展開とともに、国内でも急速に広がりを見せている。年々増加する訪日外国人らの宿泊先不足の解消や、空き家問題の解決にもつながる。その一方で、一定のルールがなく違法で運営する民泊でのトラブルも問題となっている。一昨年の厚生労働省による実態調査では、許可取得の民泊は全体の約17%しかないことが明らかになった。特に観光地などでは、昼夜を問わず騒音が絶えない、ゴミ出しや喫煙のルールが守られていないなど周辺住民からの苦情が相次いでいる。

 そこで新法では、地域の実情を反映させようと都道府県や東京23区ごとに条例をつくり、地域や曜日の制限など規制を上乗せすることが認められた。

 東京23区の中では、昨年末に大田区と新宿区が条例を制定。来月15日から始まる届け出に間に合わせようと、13の区が条例を準備するが、まだ具体的な動きが見られない自治体もある。住居専用地域を制限するケースが多いなか、中央区や目黒区は、区内全域を対象に土日のみ営業を認める案を打ち出した。

 こうした独自規制に対し、政府は昨年の12月末に公表したガイドライン(指針)で「通年禁止や全域を一律に制限するのは法の目的を逸脱するものであり適切ではない」とした。ただ、自治体での制限が厳しくなると、事業者の入り口が狭くなってしまう懸念がある。

 大田区は一昨年から国家戦略特区を活用した「特区民泊」をスタートさせている。特区では旅館業法が適用されない特例として、区が設置した条例に基づいて民泊を運営できる。新法施行による新たな条例では、特区民泊と同じくホテルや旅館が営業できない地域では通年で禁止している。

 また、区内全域で土日のみの営業を認める条例を準備しているのが中央区だ。生活衛生課の担当者は制限の理由を「区内にはまんべんなく住宅地がある」とし、「セキュリティがしっかりしているはずのマンションに外国人が出入りすることに住民の不安の声が大きい」と語る。こういった意見を踏まえ、家を空けることの多い平日を禁止したという。

 民泊を所管する観光庁の観光産業課は「法律が自治体での条例を認めている以上、どの条例が良い、悪いとの判断はできない。法の趣旨を十分に理解した上で検討してもらいたい」と本紙の取材で語った。

 都内で民泊物件数が最も多い新宿区では、違法民泊に対して住民からの苦情が多く寄せられている。ナイフを持った宿泊客が自宅の庭の木を切っていたため警察に通報した事例もあった。同区の条例では、住居専用地域での平日営業を禁止し、違法民泊の取り締まりと罰則を強化する方針。同区の保健所衛生課の担当者は「法律にのっとってきちんと表に出していく。今後は人員を増やして対応する」と語った。

 厳しすぎるルールや罰則は違法民泊を増やす結果になりかねない。民泊が解禁となるも、普及によって得られるメリットと住環境への配慮とのバランスをどう保っていくか、課題は多い。