香川県・小豆島 島一周サイクリングやバーベキュー


移住の若者活躍する島に

 瀬戸内海に浮かぶ香川県・小豆島で昨年5月14日、Uターンで島に戻ってきた若者が企画する「小豆島一周サイクリング&無人島BBQ」(主催・土庄町、土庄町地域おこし協力隊)が行われ、17人(島外者15人)が参加した。小豆島は年々人口が減少する一方で若者の移住が増えており、若手移住者の活躍する島へと変わりつつある。

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 映画「二十四の瞳」の舞台でもあり、また国産オリーブの産地としても知られる小豆島は、道のアップダウンの激しさや島1周の距離がサイクリングに適しており、中上級者からも人気のスポットだ。

 自転車で小豆島を1周することを「豆イチ」といい、同イベントでは「豆イチ」をしながら島の豊かな自然や瀬戸内海の景観を楽しむことができる。

 参加者は午前9時にスタート。コースは全長約65㌔で、途中のオリーブ公園や大坂城残石記念公園といった観光名所にはエイドステーション(飲食物を補給できる場所)が設けられ、島の海産物や農産物を盛大に使った料理を提供する。郷土料理の桜寿司や島野菜を使ったファルファッレなどを食べながら、観光気分を味わえる。

 中でも、一番の目玉が無人島でのバーベキュー。「豆イチ」まで残り5㌔という地点でチャーター船に乗り込み、電気も水道もない無人島に移動してバーベキューを行う。使われる肉は全て小豆島オリーブ牛。オリーブを搾油した後の果実を飼料化した餌で育てられた高級品で、参加者からも驚きと歓声の声が上がった。

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無人島に上陸する参加者たち。砂浜に流木で「WELCOME豆イチ」と書かれている=須藤渚さん提供

 このイベントを企画した須藤渚さん(33)は「サイクリングをしている方はアウトドアが好きな方が多く、無人島バーベキューをくっつけるのはピッタリだと思った」と語る。幼い頃に家族で無人島に行き、バーベキューを楽しんでいた経験も今回のアイデアにつながった。昨年の11月には、他のサイクリングイベントと明確に差別化できている点と今後のインバウンド(外国人観光客)の取り込みの可能性が評価され、文化庁や観光庁などからも表彰されている。

 須藤さんはもともと小豆島の出身で、大阪からUターン移住で地域おこし協力隊に入った。この企画を思い付いたのは、もっとサイクリングを推すことで島に人を呼び込めるのではないかと考えたことがきっかけだった。

 国勢調査(平成27年10月時点)によると、小豆島の人口は2万8864人。前回の平成22年の調査では3万1275人で、5年で2400人以上の人口減という状況だ。人口減少は深刻な問題だが、同島に移住する人々が年々増加傾向にあることも注目されている。

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文化庁などが主催する「スポーツ文化ツーリズムアワード2017」でチャレンジ部門に入賞し、賞状を受け取る須藤渚さん(右から3番目)=昨年11月22日午後、大田区羽田空港(石井孝秀撮影)

 小豆郡土庄町によると、Uターンを除く小豆島への移住者は平成25年度に183人、26年度は198人、27年度は270人。そのうち20~40代の割合は、25年度が約63㌫、26年度は約73㌫、27年度は約68㌫という数字で、さらに20歳未満を含めれば移住者の大半を若年層が占めている。

 病院や学校などの施設が整っている点や天候不順によるフェリーの欠航も起きにくい点などが、移住先として選ばれやすい理由とみられ、東日本大震災後に関東から引っ越してきたケースもあるという。移住者が新しくカフェやレストランを開くこともあり、地域の活性化には欠かせない存在となりつつある。

 次回のイベントは今年4月29日を予定。須藤さんは「次回からはインバウンドも積極的に取り込めるようにしたい」と意気込む。

(社会部・石井孝秀)