北海道教育委、キックオフイベントを開催


10月は「どさん子 体力アップ強調月間」

 全国にくらべ生徒・児童の体力が劣るといわれる北海道。全国一斉の体力テストでも最下位レベルに位置する中で、子供たちの体力をアップさせる企画として北海道教育委員会は今年から10月の1カ月間を「どさん子体力アップ強調月間」と定め、そのキックオフイベントがこのほど、札幌市内で開かれた。(札幌支局・湯朝 肇)

保護者の理解・支援が不可欠

北海道教育委、キックオフイベントを開催

「どさん子体力アップ強調月間」のトークショーに参加したパネリストたち

 「子供たちが屋外での体力づくりに参加するには、やはり楽しさがないと長く続かないと思う」―こう語るのは、元コンサドーレ札幌のMF(ミッド・フィルダー)として活躍した砂川誠氏。9月22日、札幌市内にある道庁赤レンガ庁舎前広場で開かれた「どさん子体力アップ強調月間 キックオフイベント」(主催、北海道教育委員会)のトークショーで砂川氏は、自ら主宰しているサッカー教室での取り組みを紹介しながら、子供たちの体力づくりやスポーツに対する動機付けについて持論を展開した。

 この日のトークショーにパネリストとして出席したのは、砂川氏のほか、冬季五輪でアルペンスキー選手として活躍した川端絵美氏、車いすマラソン選手でクロスカントリースキー選手の新田のんの氏、元ノルディック複合選手の森敏氏の4人。現在、現役選手として、あるいは指導者として活躍するパネリストが「どさん子への運動のススメ」をテーマに子供たちの体力向上について話し合った。

 特に、川端絵美氏は、道内の子供たちの体力の低さの要因について、「北海道の子供たちは豊かな自然の中でのびのびと運動しているというイメージはあるが、実はそうでもない。人口減少によって地域には学校が一つ。スクールバスで送迎されて家に帰るとゲーム三昧というケースが多い。これでは体力が上がるはずはない」と説明。さらに「体力、運動能力を高めるにはやはり、保護者の理解や地域の支え、協力が必要だ」と語った。

 また、障害者アスリートの新田氏は障害者に対してスポーツの参加を促すにあたって、「障害者がスポーツできる場所が制限されているだけでなく、健常者に比べて機材が高価なことが広がりを妨げる要因の一つになっている。行政には、そうした面を考慮してもらえれば嬉(うれ)しい」と語り、地域の理解、行政からの支援の必要性を訴えた。

 キックオフイベントの会場では、なわ跳びや簡易型のクライミングウォールも備えられ親子で楽しむ体験コーナーも設置。また、「北海道ダブルダッチ協会」の会員らによるなわ跳びパフォーマンスも披露された。

北海道教育委、キックオフイベントを開催

北海道ダブルダッチ協会による2本のロープを使った演技

 ダブルダッチとは2本のロープを使って跳ぶなわ跳びのこと。3人以上で行い、向かい合った2人の回し手がロープを交互に回す中をジャンパー(跳び手)が、リズムに合わせさまざまな技を交えて飛ぶというもの。「ちょっと練習すれば誰でもどこでもできます。集中力や持久力、バランス、チームワークなどが自然に身に付いていきます」と日高龍太郎会長はダブルダッチのメリットを話す。

 今回、道教委が毎年10月を「どさん子体力アップ強調月間」と定めたことについて、北海道教育庁学校教育局の駒井博和主幹は、「子供たちが『生きる力』を育む上で体力は極めて重要な要素。また生涯を通じて生き生きと生活を送るためにも体力は不可欠。人口減少、少子高齢化社会を迎える中で、学校、家庭、地域、行政が一体となって子供の体力づくりに取り組んでいく機運を高めたい。今回の強調月間の制定がそのきっかけになってほしい」と語る。

 道教委では今後、①学校には1校1実践の体力づくりの取り組みや地域で実施されるスポーツイベントへの積極的な参加の奨励②家庭へは運動やスポーツに親子で取り組む機会の充実や生活習慣の改善③団体や企業には、子供や親子を対象にしたスポーツイベント、スポーツ教室の開催-などを求め、「オール北海道」として子供たちの体力向上に取り組む環境をつくりたいとしている。もっとも、今回の強調月間の制定が子供たちの体力アップの起爆剤になるには、何よりも大人たちの意識の高まりがキー(鍵)になるのは言うまでもない。