「息を引き取る」なにがしか


加藤 隆

死と生の背後の精神性

名寄市立大学教授 加藤 隆

 「息を引き取る」という言葉がある。人が亡くなる際によく使われる言い方だが、考えてみると不思議で意味深い日本語ではないだろうか。このことの背景にある精神性について少し考えてみたい。

 「息を引き取る」の「引き取る」とは、たとえば「荷物を引き取る」「身寄りのない人を引き取る」のように、誰かが何かを引き取るときに使われるのが一般的である。仮に、「息を引き取る」に「子」を付け足して、「息子を引き取る」というと状況がよりはっきりしてくる。誰かが息子を引き取るのである。決して、息子自身が自分を引き取るのではないことだけは確かである。


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