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離島は日本の未来予想図


日本離島センター専務理事 小島愛之助氏に聞く

 人口減などの課題を抱える離島をさまざまな側面から支援し、「アイランダーズ」などのイベントを主催する公益財団法人・日本離島センターの小島愛之助専務理事に、離島の人口減対策や昨年4月施行された「有人国境離島地域等特措法」の狙いについて聞いた。
(聞き手=藤橋進)

特措法が島での起業支援
少子高齢化、昭和60年代から

日本の離島の構成と概要を説明して下さい。

小島愛之助氏

 そもそも日本自体が島であるという認識に立つ必要があります。日本を構成する6852の島のうち、本州、四国、北海道、九州、沖縄本島の五つを本土とすると、離島は6847あります。そのうち418、だいたい400強が人の住んでいる島です。面積では国土の2%にすぎませんが、離島全体の海岸線延長は、全体の5分の1(約8000㌔㍍)を占めています。

 当然のことながら人口の少ない島が明らかに多く、500人未満の島が全体の半数以上を占めています。その中でも100人未満というのは、いずれの日か無人化するリスクを持っています。現にこの数年でも、人口一桁だった島が無人になったという例もあります。私は以前から離島は日本の未来予想図と言ってきました。離島は日本の少子高齢化に先んじて対面してきたわけです。つまり、現在の日本の状況が、離島では昭和60年代頃から起きていたということです。

近年、離島への関心が高っている背景は。

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 まず離島が日本の領海や排他的経済水域(EEZ)の基点となっているということがあります。離島の存在によって日本のEEZの広さが世界第6位までなっています。実に国土面積の約12倍近くのEEZを守ってるのです。もし、こういった島々、例えば南鳥島等が日本でなくなれば、この部分の海域を失うことになります。であるならば、そこをきちんと守っていく必要があるのではないか、これが第一にあるわけです。尖閣諸島や竹島問題で国際的な軋轢が厳しくなり、国民の関心がぐっと高まったと思っています。

離島が抱えている課題は。

 一番困っているのは医療、大きな病院がありません。診療所があっても医師が常駐していませんし、看護師さんも簡単には見つかりません。アイランダーでも求人を募集していました。すべてではありませんが、医者の方は一般的に先端医療から遅れをとることを嫌う傾向があるようです。もう一つの課題はまさに教育です。高校が存在する離島はそれほど多くありませんが、大学まで存在する離島は全くありません。

昨年4月施行された「有人国境離島地域等特措法」の一番の狙いは何ですか。

 領海基線を有している国境の島々を守るには、何より離島に人が住んでもらわないといけません。そのためには、離島の地域社会が維持していけるような環境をつくっていかないといけないと思います。具体的には、離島で生まれ育った人たちが高等教育を受けるために島外に出たとしても、あるいは最初の仕事で島外に出たとしても将来必ず戻って来れるような社会にしましょうというのが狙いです。

 正式名称を「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」といい、施策が2種類に分かれています。有人国境離島地域については、例えば、国の施設を設置するとか、土地の買い取りを行うとか、港湾を整備するとか、不法侵入等の違法行為を防止するとかといった点の努力義務が置かれています。

 他方、特定有人国境離島地域については財政措置とともに特別配慮の規定が置かれています。一つは、航路と航空路について離島住民向けの運賃補助が整備されており、報道等ではこの面が大きく取り上げられているようです。もちろん、離島住民にとっては運賃低廉化が重要であることは否定しませんが、この法律の根幹は運賃低廉化ではありません。最大の柱は、離島で起業しようという人に費用負担をする、そのための職業訓練も行う等の施策を通じて、島外の高校や大学に出て行った人たちが戻って来たときに、きちんと仕事ができるような社会づくりを支援するというものです。生まれ育った人たちだけではなくて、都会生まれで離島に移り住んで仕事しようという人も支援していきたいと思います。

離島への移住を希望する若い人も増えてきているようですね。

 アイランダーのテーマの一つである移住・定住の促進を、例えば鹿児島県の十島村等では地道に積み上げてきました。隠岐の海士町のように、移住して仕事をする人たちを支援するような体制を確立した離島では、その成果が出ています。

 もう一つは総務省の地域起こし協力隊制度です。定着率は必ずしも高くありませんが、3年を終えた人たちが住み着いて、店舗営業をしたり、新しく業を起こすという実例もあります。このような人たちの活動がうまく回って、あの人がいるから、あの島に行こうというネットワーキング、いうなれば「人が人を呼ぶ」という動きが離島で起きています。

 三点目はUターンです。私も驚いたのですが、ある離島の漁師の息子さんが、大学に進学するときに父親から「帰って来なくていい」と言われたそうです。しかし、その息子さんは在学中に資格を取って、島に帰り、漁業を支援する会社を立ち上げたそうです。しかも、そういう時に友達が一緒に来る、単なるUターンではなく、付加価値を付けたUターンであると思います。離島の高齢者の方々が、こういう人たちを温かい目で育てていただけると、世の中が変わっていくのではないかと思っています。

IT産業などでも動きがあるのでは。

 ITに関して、一番動いているのは奄美大島だと思います。廃校や空家をリニューアルして、IT企業のサテライトオフィスに仕上げていくという動きも次第に全国展開し始めました。それから、周囲が海ですので、洋上風力や潮流発電など再生可能エネルギーも有望な分野だと思います。離島自体のエネルギー源になるのと同時に、その実証試験の現場に視察旅行等で人を呼ぶことも可能になります。一方で、六次産業化ということが言われていますが、ITを利用して、水産、加工、販売までをきちんとやることもできるのではないでしょうか。

離島の産業としては観光が大きいですが、離島観光の可能性はどうでしょう。

 2020年に東京オリ・パラで来日する欧州内陸部の中間層の人たちで、2週間程度滞在できる人たちに離島に来てもらおうではないかと考えています。離島の景観等にはそれだけの魅力があると信じています。そのために必要なことは、交通アクセスの改善で、せめて2000㍍以上の滑走路のある空港には、国際空港からの直行便を飛ばすべきではないかと思っています。

 それから、情報発信ですが、外国人が、自分で勝手に未知の離島を歩いて、フェイスブックやインスタグラム等で情報発信しています。瀬戸内海の多島美もエーゲ海に負けずとも劣らない、そういう点を売り込んでいくべきだと思います、魅力の発信とアクセスの改善が鍵であると考えています。

離島にはいろいろな魅力があるわけですから、それをもっと発信し生かしてほしいですね。

 以前から、山村留学とか海洋留学がありましたが、離島留学というものも増えてきています。不登校の子供等も明るくなっています。それはやはり自然だと思います。それから、広島県の大崎上島という離島には、リタイアした人たちが移り住んできています。広島空港から車と船を乗り継いで1時間程度で行けます。都市と接近度があり、それでいて自然があるわけです。都会でアレルギー等を感じた子供たちが元気になれるように、リタイアして余生を過ごそうという人たちにとっても、離島には魅力があるようです。