日本の安全保障のため「秘密情報収集機関」の設立を


 今年は、日本が独立国家として国家安全保障上の長年の諸懸案解決を図る年である。その成果次第では、日本の今後の命運を決する公算が大きい。それ故に、安倍内閣に課せられた任務は重大である。

 国会答弁の是正が必要

 北東アジアの情勢は、周知のように緊迫化している。第2次安倍内閣誕生以来、国家に不可欠な安全保障上の体制改革が行われたが、まだ緒に就いたばかりだ。「国家安全保障戦略」では「日米同盟の強化」に取り組むとしている。

 だが、「今後も安全保障を米国に全面的に依存し続けられるか」「依存できるとしてもそれでよいのか」を検討すべき時期である。米国の国力の衰退、オバマ現政権の対アジア、対日政策を念頭に置けば、米国への過剰な期待はできない状況にあると言える。

 中国が沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定した問題に絡んで、米政府が日本政府と違って民間航空会社に中国への飛行計画提出を容認したことや、安倍晋三首相の靖国神社参拝への非難等も考慮する必要がある。

 米国の過去の対中政策を顧みれば、常に大陸の政権がどちらに転んでもいいように保険をかけているからだ。自己の防衛力の足らざるを補うものであるという、同盟本来の機能を忘れるべきではない。

 また、55年体制下での防衛をめぐる国会答弁の是正も避けて通るわけにはいかない。集団的自衛権の行使違憲論に象徴されるような国際常識や法理に反する解釈の呪縛から抜け出すことが必要だ。これは「是正」であって「解釈改憲」ではない。

 国家安全保障会議(日本版NSC)は設立されたが、その要員は各省庁からの寄せ集めだ。その上、ほとんどが行政官僚であって、情報分析・評価、政策立案などの能力を持ったスタッフは極めて少数である。早急に専任要員の募集、育成に努めるべきである。

 同会議が期待されている役割を果たすためには「秘密情報収集機関」の設立が不可欠である。

 1939年8月に独ソ不可侵条約が締結された際、当時の平沼騏一郎首相が「欧州の天地は複雑怪奇」の言葉を残して内閣総辞職したような事態が、戦後も再三にわたって起きている。弱い動物ほど聴覚が優れていないと生き残れないことを知るべきだ。

 また、特定秘密保護法の制定で、国家の存立に関わる情報漏洩を防止できると考えてはならない。英国の「MI5」のような防諜機関の設立も必要である。この機関はテロリストの摘発にも有効である。

 武器輸出で防衛力強化を

 10年にわたって減少し続けた防衛予算のため、防衛力は大きく低下している。我が国の防衛費を国際比較すれば、英仏両国と同規模である。だが、英仏両国は核兵器、航空母艦を保有している。

 この打開策は武器輸出による購入武器のコスト削減しかない。いつの間にか“禁輸”のための原則になった「武器輸出三原則」を、本来の“輸出”のためのものに戻すべきである。

(1月3日付社説)