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「アポ電」強盗、一人ひとりが自衛策講じたい


 東京都江東区のマンションで住人の80歳女性が手足などを縛られ殺害された事件で、警視庁は強盗殺人などの容疑で男3人を逮捕した。

 事件前には、特殊詐欺の手口の一つで、資産状況などを確認する「アポ電」(アポイントメント電話)とみられる不審電話が被害者宅にかかっていた。

 凶悪な事件が相次ぐ

 アポ電とは、親族、警察官、金融機関の職員らを装い、資産状況や家族構成などを確かめる不審電話。振り込め詐欺などの特殊詐欺を仕掛ける前にかかってくるため、警視庁は「犯行予兆電話」と呼んでいる。

 江東区の事件が起きる前、被害者は「お金がありますか」という電話があったと知人男性に相談していた。これと同じ時期に、被害者のマンション周辺を3人組が徘徊(はいかい)する様子が付近の防犯カメラに映っていたことも明らかになっている。

 昨年都内で確認されたアポ電は、通報があっただけで3万4658件。前年より8747件増え、2年前の2倍以上となった。今年は2月までで6368件に上り、昨年を上回るペースで増えている。区役所や市役所の職員を装うケースが最も多いという。

 このアポ電が、近年は凶悪な強盗事件にも悪用されるケースが相次いでいる。都内では、今年1~2月に渋谷区でアポ電がきっかけとなった強盗が計2件発生し、警視庁は逮捕した3人の関与を調べている。大阪府や神奈川県でも同様の事件が確認されている。

 警察庁によれば、昨年1年間に全国の警察が把握した特殊詐欺の被害総額は、前年比38億円(9・6%)減の356億8000万円だった。

 一方、だまされたふり作戦などを積極的に進めた結果、摘発は5162件(2747人)となり、件数、人数ともに10%以上増加した。

 警察庁は依然として深刻な情勢が続いているとの見方を示すとともに「犯行グループの壊滅に向けた取り締まり強化や金融機関と連携した被害防止策の推進などで、一定の成果は出ている」と分析している。

 凶悪化の背景には、これまでの詐欺の手法では通用しない事例が増えてきたことがあろう。警察幹部は、凶悪化について「詐欺グループが現金の受け取りに失敗して手口を切り替えるほか、当初から強盗目的で電話をかけている可能性もある」とみている。

 特殊詐欺自体が卑劣で許し難い犯罪だが、詐欺グループが強盗や殺人も躊躇(ちゅうちょ)しないというのであれば、このまま野放しにしておくわけにはいかない。全国の警察は取り締まりの強化に全力を挙げる必要がある。

 日ごろから家族と連絡を

 これとともに、一人ひとりが自衛策を講じることも大切だ。在宅中でも留守番電話機能で対応し、電話に出て資産状況や個人情報などを聞かれた場合は、電話を切って警察に相談してほしい。アポ電は犯行の前触れだとの警戒心が求められる。

 高齢の両親や祖父母がいる人は、日ごろから連絡を絶やさないようにすることも被害防止につながるだろう。