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INF条約失効へ、米は中露の脅威への対処急げ


 ロシアのプーチン大統領は今月に入って、冷戦時代の1987年に米国との間で締結された中距離核戦力(INF)全廃条約の履行停止を命じる大統領令に署名した。

 米国は既に今年2月、10年以上にわたるロシア側の条約違反を理由に履行停止をロシアに通告している。条約で規定された猶予期間の6カ月以内に米露の歩み寄りがなければ、8月にも失効する。

制約を受けない中国

 INF全廃条約は、射程500~5500㌔の地上発射型ミサイルの廃棄を明記し、開発・実験・保有を禁じている。核兵器を削減する初の条約で、双方でミサイル計約2700基を廃棄した。

 米政府は、ロシアが既に2015年ごろから条約に違反し、地上発射型の新型巡航ミサイル「SSC8」を開発したと主張してきた。SSC8は17年2月に実戦配備されたとも報じられている。

 ロシアはこれによって、北大西洋条約機構(NATO)加盟国をごく短時間で核攻撃できるようになる。同盟国を守るため、米国がINF条約を破棄したのは当然の対応だ。

 一方、プーチン氏は今年2月の年次教書演説で、米国が東欧に展開するミサイル防衛(MD)システムに言及して「条約に違反したのは米国の方だ」と非難した。

 さらに「米国が欧州に新たな中距離ミサイルを配備すれば、配備場所だけでなく、意思決定した米国も射程に収める最新兵器を使って対抗処置を取らざるを得ない」と強調。最大で音速の9倍で飛行し、米国のMD網を突破する核搭載ミサイル「ツィルコン」を潜水艦に搭載して米国の領海付近に配備すると述べ、米国を牽制(けんせい)した。

 トランプ米大統領がINF条約破棄を決定した背景には、ロシアの条約違反とともに条約の制約を受けない中国が核ミサイル開発を進めていることへの懸念がある。英国際戦略研究所(IISS)は、中国保有の核兵器の95%が(もし中国が加盟していれば)INF条約違反に当たると指摘している。米国は中露の脅威への対処を急がなければならない。

 技術の進歩や拡散に伴い、中距離ミサイルの配備が容易になった。ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、INF条約では中国やイラン、北朝鮮の核ミサイル開発を制限できないと説明。世界の現状に即さず「時代遅れだ」と述べた。中国などの中距離核戦力は、米国の同盟国である日本にとっても大きな脅威だ。

技術開発で抑止力向上を

 トランプ氏は2月の一般教書演説で、INF条約破棄をめぐって「中国も含めた新たな条約を交渉できるかもしれないし、できないかもしれない。その場合は他国を大きく引き離す技術開発に投資する」と表明した。

 INF条約に代わる多国間条約を締結することは一つの考えではあるが、ボルトン氏は「中国が既に保有した核ミサイルを廃棄するのは非現実的だ」と否定的な見解を示している。自国や同盟国を守るため、米国の抑止力向上が欠かせない。