中国機器排除、同盟の抑止力維持に必要


 政府は、各府省庁が情報通信機器を調達する際、情報の抜き取りや破壊などの機能が組み込まれた恐れのある機器の排除を申し合わせた。米政府が使用禁止に動く中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)を念頭に置いた措置だ。

米政府機関も使用禁止

 排除の対象はパソコンやスマートフォンなどの端末機器に加え、ルーターやサーバーなどの基幹システムで、現在使用中の機器についても取り換えを検討する。安倍晋三首相は「悪意ある機能が組み込まれた機器を調達しないことが極めて重要だ」と指摘した。

 安全保障や外交上の機密情報が盗まれたり、関係官庁がサイバー攻撃を受けたりすれば、国民の生命が危険にさらされることになりかねない。こうした機器の排除は当然のことだ。

 米議会は2012年、中国政府に近いファーウェイとZTEがスパイ行為に使われている疑いを指摘し、2社の製品が国家安全保障の「脅威」に当たると認定。今年8月に成立した米国防権限法は、全ての米政府機関や米政府と取引する企業を対象に、ファーウェイなどの商品を使うことを禁じている。

 米国は自国だけでなく同盟国政府にも中国製品の使用自粛を要請。オーストラリアとニュージーランド、英国が同調し、日本も追随する方針だ。日本が対策を取らなければ、日米同盟の弱体化にもつながりかねない。同盟の抑止力を維持する上で、適切な判断だと言えよう。

 ファーウェイをめぐっては、米当局の要請を受けたカナダ当局が孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕している。ファーウェイは、世界一の「製造強国」を目指す中国の産業政策「中国製造2025」を推進する上で最も重要な企業だとされている。

 中国製造2025は25年までに半導体などキーパーツの7割を国産化することを目指すものだ。こうした技術は軍事転用できるため、目標が達成されれば米国の軍事的優位が脅かされることになる。

 米国は、中国による知的財産権侵害を理由に、中国製品への制裁関税を7月から3回にわたって発動した。米国の最大の狙いは巨額の補助金がつぎ込まれている中国製造2025を見直させることで、制裁の対象はこの政策で推進するハイテク産業分野だ。中国も報復関税で応酬しているため、米中の貿易摩擦が激化している。

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は今月初めの首脳会談で、米国が年明けに予定した対中追加関税の25%への引き上げを当面凍結する一方、中国による知財権侵害や技術移転の強制、非関税障壁などについて協議を始めることで合意した。米国は交渉期限を90日としており、妥結できなければ、今回猶予した追加関税の引き上げに踏み切る考えだ。

貿易慣行の改善を促せ

 米国と日本などの同盟国は中国機器の排除で足並みをそろえて安保協力を強めるとともに、中国に補助金などの「不公正な貿易慣行」を改めるよう促す必要がある。