13年の世界、懸念残るオバマ氏の外交姿勢


 今年は米国でオバマ大統領の2期目がスタートした。だが、この一年で示された大統領の外交姿勢には懸念が残る。

 アジア重視に疑問符

 オバマ政権は、大西洋と向き合うヨーロッパへの関与を第一義的に考えかつ行動してきた歴代の米政権とは違い、外交・安全保障や経済面でアジア太平洋地域への全面的関与政策を標榜(ひょうぼう)している。大西洋から太平洋へ重点を移したのは、興隆するアジアにおける中国の政治・経済・軍事的台頭という現実があるからに他ならない。

 しかし大統領は10月、政府機関一部閉鎖の影響で、インドネシアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合出席などが目的の東南アジア4カ国歴訪を中止。アジア重視戦略の本気度に疑問符が付いた。逆に会議を通じて、中国の存在感が一層増したことは疑いようがない。

 中国の台頭は現代の世界情勢で最も重要な現象であり、米国も中国との経済関係を深めている。締結交渉を進めている環太平洋連携協定(TPP)も中国を意識してのものである。

 一方、中国は海軍力を増強して、西太平洋地域における米国の主要な潜在的脅威になっている。中国は、日本列島からフィリピンの西側に至る第1列島線を越え、日本南方とグアム、パプアニューギニアなどを結ぶ第2列島線まで制海権を拡大しようとしている。

 6月の米中首脳会談では、対決ではなく協力・互恵を目指す「新型大国関係」の構築で一致した。しかし、中国の習近平国家主席は「広く大きな太平洋には米中の両大国を受け入れる十分な空間がある」と訴え、中国の軍事的な台頭を認めるよう暗に求めた。

 中国は米国の第1・第2列島線への接近、介入を阻止するために、潜水艦、対艦弾道ミサイル(ASBM)などにより接近阻止領域拒否(A2AD)戦略を推進。米国はエアシーバトル(空軍と海軍の統合作戦)構想で対抗している。

 しかし、国防費の強制削減が構想に必要な兵器の調達を困難にするとの見方もある。エアシーバトル構想のメッセージは対中抑止として重要であり、オバマ大統領は推進に指導力を発揮すべきだ。

 一方、内戦が続くシリアのアサド政権は8月、化学兵器を使用した。これは国際法違反であり、オバマ大統領は「レッドライン」(越えてはならない一線)としていた。しかし、シリアへの軍事介入については、米議会の承認を求めるという消極的姿勢を示した。

 大統領は9月、テレビ演説で「米国は世界の警察官ではない」と述べた。これまで世界の安全保障に責任を負ってきた米国の役割を放棄するかのような発言だ。

 これでは、中国の台頭に直面するアジア諸国の中から対米関係を見直さざるを得ない国が出てくることも考えられる。

 プレゼンスを高めよ

 中国は11月、沖縄・尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定した。米国は東アジアでのプレゼンスを一層高める必要がある。

(12月30日付社説)