ペンス氏演説、中国の軍事的膨張を許すな


 ペンス米副大統領はパプアニューギニアで行った演説で、中国が軍事拠点化を進める南シナ海について「米国は海と空の(通航の)自由を支持し続ける」と述べ、米海軍の「航行の自由作戦」を継続する立場を示した。

 中国の軍事的膨張を封じ込める狙いだ。

南シナ海拠点化は「違法」

 ペンス氏の演説に先立って米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は中国の動向に関する年次報告書を発表し、中国の軍事戦略について「2035年までにインド洋や太平洋の全域で米軍に対抗できる能力を備えるだろう」と警鐘を鳴らした。

 報告書は、小笠原諸島からサイパン、グアムをつなぐ中国の防衛ライン「第2列島線」では中国軍が陸海空それぞれで米軍に対抗する能力が既にあると断定。中長期的には、米国が中国の武力行使を抑止できず、軍事衝突に至った場合には優位性を確保できない恐れがあると指摘している。

 ペンス氏は演説で、パプアニューギニアのマヌス島にあるロンブラム海軍基地の拡充計画に米国が協力すると発表した。中国の軍事的膨張を許さないことは地域の安定のために極めて重要だと言える。

 またシンガポールで開かれた東アジアサミットでは、中国の南シナ海軍事拠点化と領土拡張が「違法であり危険だ」と非難した。軍事拠点化は、南シナ海に対する中国の主権主張を全面的に退けた仲裁裁判所の16年7月の判決に反するものであり、非難は的を射ている。報告書は軍事拠点化に関与する中国の国有企業や個人への制裁実施を検討するよう求めている。

 中国が主導するシルクロード経済圏構想「一帯一路」について、ペンス氏は「一部の国が開発途上国に不透明な融資をしている」と強調。インフラ整備の資金を中国が貸し付け、一部の途上国が過大な対中債務を抱える現状を暗に批判した。

 報告書は、中国が一帯一路を通じて国際社会への影響力を増強しようとしており、現地における軍事プレゼンス維持のための口実を中国政府に与えていると指摘している。トランプ米政権はインド太平洋地域向けに最大600億ドル(6・8兆円)の投融資枠を用意し、投融資の透明性と公正性によって中国が進めるインフラ計画を駆逐する構えだ。

 そのためには、インフラ支援のほか航行の自由や法の支配といった価値観を浸透させる必要がある。ペンス氏はシンガポールでの東南アジア諸国連合(ASEAN)各国首脳との会議で、中国を念頭に「インド太平洋地域に帝国と侵略が入り込む余地はない」と強調した。

米は軍事力増強を急げ

 別の諮問機関「国家防衛戦略委員会」は公表した報告書の中で、過去数十年間にわたって米国が維持してきた軍事的優位性は「危険な水準」にまで低下していると指摘。「中国やロシアと戦争になった場合には、勝利するのに苦労するか、敗北する可能性がある」と警告した。

 米国は国防費縮小などが原因で軍の規模や即応性が低下している。軍事力増強が急がれる。