文化の日 「文明」と「文化」の調和保って


 きょうは平成最後の「文化の日」。もともとは明治天皇の誕生日を祝う「天長節」で、後には「明治節」と呼ばれた。

 今年はその明治天皇を中心とする明治維新から150年目に当たる。

維新の成功を導いた皇室

 明治維新は、西欧列強に泰平の夢を破られた日本が、直面する新たな状況に対応すべく、この国を近代国家へと脱皮させる一大変革であった。それは文明開化すなわち西洋化を成し遂げる一方で、固有の伝統を保持・復古するというものだった。

 復古と革新という一見矛盾することを調和的に成し遂げることができたのは、徳川300年の間に近代化への素地が用意されていたことや日本人の思考の柔軟さもあるが、何よりも国の中心に皇室があったからである。万世一系の皇統と伝統を体現される明治天皇は、一方で自ら率先して断髪されるなど開化の先頭に立たれた。

 明治以降の日本には、西洋文明に代表される「文明」とわが国固有の伝統に根差した「文化」の調和があった。

 先の大戦終結の後、わが国は平和な「文化国家」を目指すと世界に宣言した。ただこの「文化」は、多分に戦前の軍国主義的な「武」を否定するニュアンスを含むものであった。また、欧米の「普遍文化」あるいは文明に対し、伝統的な価値観や文化を低く見るものであった。その意味で、戦後の一時期は伝統文化受難の時代であった。

 しかし、伝統文化はその生命力と保存に向けた関係者の努力によって甦(よみがえ)った。例えば、かつて若い人たちが注目することの稀だった伝統芸能が関心を集めるようになっている。

 伝統は守っていくだけのものではなく、発見するものでもある。それは日本人の血肉となっており、歴史や考古学の研究の進展で先人たちの姿が明らかになることによって、それが今も生きていることを知ることも少なくない。

 例えば、世界最古の土器、縄文土器に象徴される縄文文化がそうである。平和的で自然と共生してきた縄文人の姿が明らかになることで、日本人とは何か、あるいは今の日本人が失ったものは何かを自覚するようになった。地球規模で環境破壊が進む中、縄文文化は人類に多くの示唆を与えるものだ。

 伝統文化がどれだけ大きな財産であるかは、戦後の日本の歩みを振り返っても明らかだが、日本文化を育んできた、わが国の自然や風土にもう一度目を向けたい。白砂青松の海岸風景や四季折々の風物が日本人の感性と文化の素地であったが、地球規模の気候変動の中で、それらが失われようとしている。自然環境の保存は、文化の保存につながる課題だ。

日本の魅力を高めたい

 文明と文化の調和、伝統と近代の共存は、わが国の大きな魅力であり、観光資源でもある。インバウンド時代の到来とともに、その魅力をさらに高めていきたい。

 何よりも来日する外国人は、日本人の普段の生活の中に日本らしさを感じた時に愛着と尊敬が生まれ、またこの国に来たいと思うに違いない。