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本庶氏ノーベル賞、日本の医学の力を見せた


 2018年のノーベル医学生理学賞は、免疫を抑制するタンパク質を発見し、がん免疫治療薬「オプジーボ」の開発につなげた京都大特別教授の本庶佑氏に授与されることが決まった。がんという難敵と闘って大きな成果を出し、日本の医学が高く評価されることになった。

画期的ながん免疫療法

 日本人のノーベル賞受賞は2年ぶりで、日本の受賞者は米国籍取得者を含め計26人となった。医学生理学賞は一昨年の大隅良典氏、3年前の大村智氏らに続き5人目だ。

 本庶氏は免疫を抑える働きを阻害することでがんを治療する画期的な免疫療法を確立し、がん治療に新たな道を開いた。本庶氏が発見したのは、体内の異物を攻撃する免疫細胞の表面にある「PD―1」という免疫の働きを抑える分子。この分子ががん細胞に対して働くのを妨げ、免疫ががんを攻撃し続けられるようにするオプジーボが開発され、複数の種類のがんで使われている。

 現在の抗がん剤の治療では、抗がん剤が効いてもがん細胞が変異して薬に対して耐性を持つため、別の抗がん剤を使う。耐性ができた場合はまた別の抗がん剤といたちごっこになっている。がんの種類によるが、免疫療法では、がんが治るようになったということだ。

 がん免疫療法の歴史は始まったばかりで、抗生物質に例えるとペニシリンが発見された時期に相当すると言われるほど有望だ。既に米国のがん研究は、4分の3の成果が免疫関連とみられている。

 本庶氏は1942年、京都市生まれ。京都大医学部卒業後、基礎研究を志し、米国に留学。カーネギー研究所や国立衛生研究所関連の研究所で分子遺伝学などの研究を進めた。帰国後、京都大では遺伝子実験施設の施設長なども務め、92年にPD―1を発見した。

 少年時代に野口英世の伝記を読み、人の命を救う医学という分野も素晴らしいと大きな興味を持ったという。また学生・研究時代の60~80年代は、わが国の経済成長期に当たり、大学の理科、医学系の教育が充実し、専攻する学生が増え、その中で多くの技術者や研究者が輩出された。ノーベル賞受賞は本庶氏の抜きんでた才能ゆえだが、この時代を背景に切磋琢磨(せっさたくま)しながら能力を開花していった。

 一方、ここ数年来の日本人のノーベル賞受賞ラッシュで日本の科学技術の栄光が大きいだけに、今日の日本の大学や研究機関での基礎研究の担い手の減少、研究費の削減という事実を憂慮せざるを得ない。

 先般発表された「世界大学ランキング」では、日本の大学は概(おおむ)ね好評価を獲得しているが、ランクインした44校のうち27校が評価を落としている。国際的な学術コミュニティーにおいて、以前と比べて日本の大学の威信が相対的に低下している。

基礎研究支援を急げ

 今日、政府も企業も研究の選択と集中を重視するが、何に集中するのが適切なのか分からないのが現実ではないか。基礎研究に専心でき、そこから応用科学への発展が可能となるような支援を急ぐべきだ。