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ドーピング問題、ロシアへの処分解除は疑問だ


 世界反ドーピング機関(WADA)が、国ぐるみのドーピング問題で資格を停止しているロシア反ドーピング機関(RUSADA)の処分解除を決めた。

 だが、ロシアはいまだに国の関与を認めていない。処分解除には疑問が残る。

国ぐるみの不正認めず

 この問題をめぐっては、ロシアの検査機関元所長の告発をドイツ・メディアが報じ、WADAは2015年11月にロシアの組織的不正を認定。RUSADAは規定を順守していない「不適格組織」として処分された。ロシア勢は16年リオデジャネイロ夏季五輪では陸上選手のほとんどが排除され、18年平昌冬季五輪には国を代表しないOAR(ロシアからの五輪選手)として個人資格で出場した。

 今回処分が解除されたのは、ロシア側が、組織的不正を認定した国際オリンピック委員会(IOC)の調査結果を認め、モスクワの検査機関のデータや尿検体の提出に同意したことが評価されたためだ。処分解除の確定には、年内のデータ提出が条件となる。

 しかし、ロシアは不正への国の関与を否定し続けている。WADAの調査チームは16年12月に公表した最終報告で、1000人以上のロシア選手がドーピングに関わり、14年ソチ冬季五輪中も連邦保安局(FSB)などが隠蔽(いんぺい)工作を行っていたと指摘。スポーツ省の指示があったとしている。

 日本や米国などの反ドーピング機関は、ロシアが国ぐるみの不正を認め、尿検体などを提出するまで審議を先送りするよう求めていた。処分解除が批判を招いたのは当然だろう。

 IOCは今年2月にロシア五輪委の資格停止を解除。国際陸上競技連盟(IAAF)と国際パラリンピック委員会(IPC)が認めれば、ロシアは20年東京五輪・パラリンピックに選手団を全面的に派遣できるようになる。

 今回の処分解除は、WADAがロシアの五輪参加を望むIOCの圧力に屈したものとの見方も出ている。反ドーピング体制への信頼を大きく損なったと言わざるを得ない。

 ロシアのドーピングには根深いものがある。旧ソ連時代、政権は国力を誇示し、社会主義国家の優位性を示すための手段としてスポーツを重視した。選手の育成は国を挙げて行われ、好成績を収めれば住居や金銭、車を好条件で購入する特権が付与されたという。このため、組織的なドーピングが横行していたとされる。

 ロシアのプーチン大統領は国威発揚のため、スポーツ関連予算を急増させた。14年ソチ五輪と18年サッカー・ワールドカップ(W杯)の招致に成功する中、ロシアのスポーツ関係者は結果を求められ、不正の助長につながったとも言われる。

公平性を維持できるのか

 処分解除を決定したWADAの常任理事会では、アジア地域の政府代表の水落敏栄文部科学副大臣が賛成票を投じた。

 ロシアの東京五輪参加を期待してのものだろうが、これでスポーツの公平性を維持し、クリーンな選手を守れるのか。懸念は深まるばかりだ。