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座間事件起訴、動機と手口を究明し再発防げ


 戦後の犯罪史上に例を見ない猟奇的な凶悪事件の裁判が始まる。神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で、東京地検立川支部は白石隆浩容疑者を強盗・強制性交殺人などの罪で起訴した。大量殺人はなぜ起きたのか、裁判を通じて動機や手口を究明し、再発の防止に資すべきだ。

SNSを利用し大量殺人

 第一に、犠牲者を二度と生み出さないことだ。そのためにはインターネットやネット交流サイト(SNS)の在り様を見直す必要がある。

 起訴状などによると、白石容疑者はSNSのツイッターなどを利用して自殺願望を持つ女性たちと交流を始め、「一緒に死のう」と誘い出して犯行に及んだ。供述によれば、本当に死にたいと思っている被害者はいなかった。9人のうち3人は女子高生だ。被害者の心の叫びに付け込んだ卑劣な犯行だった。

 政府は昨年12月、再発防止策をまとめ、SNSを悪用させない取り組みを進めている。その成果が出ているのか、改めて検証すべきだ。

 ネットやSNSには有害情報が少なからず存在する。有害情報の規制には「表現の自由」を根拠に反対意見もあるが、自由は「公共の福祉」のために利用する責任を負う。サイバーパトロールを強化し悪質ネットを規制しなければ、第2、第3の座間事件が起こりかねない。

 犠牲者はいずれも20歳代以下だった。同世代の自殺者は昨年、2780人を数えている。人との繋(つな)がりが薄れ、「身近な人に話せない」という若者も少なくない。自殺願望などの情報をSNSで発信した場合、いち早く相談に乗れる仕組みを作り上げるべきだ。SNSの利用が低年齢化しているだけに対策は喫緊の課題だ。

 第二に、凶悪犯を生み出さないことだ。それには裁判を通じて犯罪の動機と背景の究明が不可欠となる。白石容疑者は「わいせつ目的だった」と供述しており、強制性交殺人などの罪で起訴されている。ここから性衝動が伴った快楽殺人との見方が有力だ。

 過去の猟奇的な連続殺人犯には「愛」の飢えから攻撃衝動を爆発させ、犯行に及んだ例が多く存在する。報道によれば、白石容疑者は両親、妹と4人家族だったが、事件発覚の数年前に母親、妹が父親と別居し、両親の離婚が引き金となって性への異常執着を見せるようになった。

 風俗店への女性派遣などに関わり、犯行前の昨年2月に茨城県警に職業安定法違反の疑いで逮捕され、執行猶予付きの有罪判決が確定していた。こうした家族の歪(ゆが)みが凶悪事件を呼び起こしたのか。動機について徹底究明してもらいたい。

 裁判では争点を絞る「公判前整理手続き」に一定の期間が必要で、弁護側が精神鑑定の再鑑定を求めれば、初公判までに1年以上を要する可能性がある。いたずらに時間を引き延ばさず、迅速な裁判を望みたい。

「絆」希薄な社会の再考を

 今回の事件では人や家族との「絆」の希薄さが指摘されている。罪を裁くだけでなく、社会の在り方について再考する機会にもしたい。