豪雨災害、被災者へのきめ細かい支援を


 西日本豪雨では死者と行方不明者が200人を超え、豪雨災害としては平成に入って最悪の被害となった。捜索、救助と共に被災者へのきめ細かい支援が求められる。

健康管理が大きな課題

 避難所には6000人近い人たちが身を寄せている。連日の猛暑の中、被災者の健康管理が大きな課題となっている。

 特に心配なのが熱中症だ。国や自治体は避難所の空調を十分にするとともに、熱中症予防のため、こまめに水分を取るよう呼び掛ける必要がある。

 自家用車で寝泊まりする被災者もいる。だが、狭いスペースでの生活が続いたり、トイレの回数を減らすために水分補給を控えたりすると、血栓が肺などの血管で詰まるエコノミークラス症候群の危険性が高まる。

 2016年4月の熊本地震では、避難生活の中でエコノミークラス症候群で亡くなった人もいる。車内や避難所で生活する被災者は、定期的に体を動かすことを心掛けてほしい。

 避難所では食中毒や感染症への注意も必要だ。また、被災した自宅の整理などの際にけがをしないようにしたい。ストレスへの対応も求められる。医療チームなどは被災者の心身の健康維持や災害関連死の防止に努めなければならない。

 政府は、自治体の要請を待たずに被災地に物資を送る「プッシュ型支援」を行っている。ただ、被災地によってニーズが異なる場合もあろう。十分できめ細かい支援をすべきだ。高速道路や鉄道、水道などの復旧も急がれる。

 豪雨災害は毎年のように起きている。14年8月には広島市で局地的豪雨による土砂崩れが発生して70人以上が死亡。昨年7月の九州北部豪雨では河川の氾濫などで40人が亡くなった。

 西日本豪雨では計11府県に特別警報が出されるなど広範囲で甚大な被害が生じた。広島市などの上空では積乱雲が次々に発生する「バックビルディング現象」が起き、集中豪雨をもたらす「線状降水帯」が形成された。最大で長さ170㌔、幅約50㌔に広がっていたとされ、これだけ広い範囲で形成されることは例がない。地球温暖化などの影響で、こうした豪雨災害は今後も起きるとみていい。

 今回、特別警報や自治体の避難指示、避難勧告が出されたタイミングが適切であったかは、もちろん検証する必要がある。ただ、住民の側もなかなか避難しようとしない面がある。

 その原因の一つとして挙げられるのが過去の経験だ。「この地域では、これまで大きな災害はなかったから今度も大丈夫だろう」と考え、避難しなかったケースが今回も見られた。

 しかし西日本豪雨は、過去の経験が当てにならないことを示したと言える。災害が予想される場合は、自治体の指示や勧告の有無にかかわらず、早めの避難が求められる。

地域全体で避難行動を

 高齢者らの「災害弱者」を地域で支えることも重要だ。自分一人であれば避難行動に移りにくくても、高齢者を助ける立場に立てば早めの行動を心掛けるようになるのではないか。地域全体での避難も検討したい。