北極政策、国際ルールに基づく秩序を


 地球温暖化の影響で北極海の氷が解け、船舶の通航や資源開発が容易になった。北極圏を利用した新航路誕生が確実とされ、北極圏開発への参入が各国で加速している。

存在感を高める中国

 北極圏には世界全体の未発見資源のうち、原油の1割、天然ガスの3割が眠っている。北極圏の中でも最大の領土を有しているロシアは、北極の資源地帯および航路としての重要性に早くから着目し、その開発・利用を進めてきた。

 プーチン大統領の指示に基づき、ロシア政府は2013年2月に「2020年までのロシア連邦北極圏の発展と国家安全保障に関する戦略」と題する文書を公表。社会、経済、科学技術、情報、国際協力、軍事など北極に関するあらゆる分野において、政府が取り組むべき具体的な政策課題に取り組んでいる。

 一方、中国は18年1月に初の「北極白書」を公表した。白書では中国を「北極圏に最も近い国の一つ」と位置付け、北極におけるルールの設定や解釈・適用で建設的役割を果たすことを強調。同時に、北極海を通る航路を「氷上シルクロード」と呼び、北極政策と中国主導のシルクロード経済圏構想「一帯一路」を結び付ける方針を打ち出した。

 中国はエネルギーを中心とした物流を、マラッカ海峡を通るルートに大きく依存している。北極海経由の航路を使えば、中国と欧州の輸送時間は、インド洋からスエズ運河を抜ける従来ルートに比べて時間が約3割短縮される。

 中国は13年12月、アイスランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの5カ国の研究機関と共に「中国・北欧北極研究センター」を上海に設立。資源開発や政策立案などの分野で関係国との連携強化を図ってきた。「極地強国」というスローガンが、国家海洋局などから頻繁に聞かれるようになっている。

 中国は南シナ海の軍事拠点化を進めるなど一方的な現状変更を強行している。北極には平和利用を定めた南極条約のような国際ルールがまだ整備されていない中、中国が北極海で存在感を高めていることには警戒を要する。

 政府は今年5月、今後5年間の海洋政策の指針となる海洋基本計画を閣議決定。海洋権益の確保に向けて「北極政策の推進」を初めて主要施策として明記した。北極圏で資源開発を進める中国を念頭に置いたものだ。

 また北極観測のため、砕氷機能を持つ「北極域研究船」の建造への経費が18年度予算に盛り込まれている。北極専用の砕氷船は国内初となる。

日本は積極的参加を

 北極圏の開発と環境保護を話し合う場としては、米国やロシアなど沿岸8カ国が1996年に設けたハイレベルの政府間協議体である「北極評議会」がある。日本は2013年からオブザーバーとして参加してきた。

 日本には海洋国家として、航行の自由確保など北極海を平和利用するための国際ルール作りの一翼を担う責任もある。国際的な枠組み作りに積極的に参加し、ルールに基づく秩序の構築に尽力すべきだ。