性犯罪対策、再犯防止へ実効性高めよ


 男は少女への異常な欲求によって犯行を繰り返した。性犯罪者に対する現在の再犯防止策は果たして適切なのか。治安向上のために対策を強化して実効性を高めるべきだ。

 効果乏しいプログラム

 岡山の事件で、男は女児の首を絞めた上、刃物で胸や腹を複数回刺して殺害した疑いが持たれている。「女児の苦しむ姿を見たかった」などと供述したとされている。

 男は岡山の事件後の15年5月に兵庫県姫路市で、帰宅途中だった中学3年の女子生徒の腹や胸を刺したとして殺人未遂容疑で逮捕され、有罪判決を受けて岡山刑務所で服役している。この6年前には、少女5人に対する暴行・傷害事件を起こして服役した。

 男の異常な欲求は、中学生の頃から自傷行為を繰り返し、その際に少女が血を流す姿を想像することで生じたという。無辜(むこ)の少女たちを殺傷したことが許されないのは当然である。一方、国が再犯防止への踏み込んだ措置を取れていないことも、凶行が繰り返された原因の一つだと言わざるを得ない。

 性犯罪者の再犯率は高い。法務省の法務総合研究所の調査によれば、同一類型の性犯罪前科が複数回ある人の割合は、低年齢の子供を狙った小児わいせつ型で84・6%に上っている。

 男は過去に服役した際に、刑務所で再犯防止プログラムを受けていた。これは奈良県で起きた女児誘拐殺害事件を契機に06年に導入されたもので、刑務官や臨床心理士らが性的欲求の「歪み」を自覚させるとともに犯行の引き金となる状況を回避する対処法などを指導する。

 しかし結局、男は再犯に及んだ。裁判では、男が受けたプログラムについて「必要性や有用性を十分に自覚することができず、効果を挙げるに至らなかった」と指摘された。性的人格障害(精神病質)や小児性愛などと診断された性犯罪前歴者については、従来の日本の更生システムでは十分に対応できないとの意見もある。

 海外では再犯防止のため、性犯罪前歴者の情報開示や全地球測位システム(GPS)の端末を装着させての監視などといった措置を取っている。欧米各国では裁判所が医療機関や保安施設への入院を命令する司法精神医療制度が確立されており、男性ホルモンを抑制する薬物療法などもある。

 日本ではこうした措置に対して「人権侵害」との批判が根強い。このため、取り組みが遅れているのが実情だ。

 「人権侵害」は的外れ

 しかし、性犯罪者の再犯による惨劇を何もしないで見ているわけにはいかない。対策強化は喫緊の課題だ。前歴者がGPSで監視されれば、自らの意思で再犯を抑える効果も期待できるという。

 これを人権侵害と批判するのは的外れであり、性犯罪の被害者を増やす結果を招くのではないか。それは決して許されないはずだ。