熊本地震2年、恒久的な住居確保が急がれる


 熊本地震の発生から2年が経過した。2016年4月14日、震度7の前震が発生。さらに16日には震度7の本震が起きた。圧死など直接死は50人で、避難生活による持病悪化といった関連死などを合わせた犠牲者は267人に上る。犠牲者の冥福を祈るとともに地震で得られた教訓を今後に生かしたい。

4万人近くが仮設住まい

 本震の直接死41人のうち13人は、前震の発生時にいったん避難したが、帰宅して死亡したという。連続した地震活動での震度7の2回観測は初めてだったこともあり、避難行動における判断の難しさを浮き彫りにしたといえる。

 住宅被害は熊本県で約20万棟あったが、半壊以上が対象の公費解体(約3万6000棟)はほぼ完了した。また、熊本県で最大時4万8000人いた仮設住宅入居者に対し、県や市町村は転居費助成など各種の住まい再建支援策を実施した。

 だが、熊本県内では依然約3万8000人が応急仮設住宅や民間物件を借り上げたみなし仮設住宅などでの生活を余儀なくされている。人手不足を背景に自宅の建設や災害公営住宅の着工は思うように進んでいない。

 県内で計画されている1735戸のうち、着工したのは4月初めで309戸のみだ。政府は仮設住宅の入居期限を1年延長したが、県では地震をきっかけに町村部の人口減少が加速している。

 被害が大きかった地域の小中学生の学力は、学力テストで低下の兆しが表れている。突然の環境変化や狭い仮設住宅暮らしで学習習慣のリズムを崩したままになっている可能性も指摘されている。このような子供たちの学習支援に力を入れるとともに、被災者の生活再建のためにも恒久的な住まいを確保することが急がれる。

 熊本地震から教訓をくみ取ることも忘れてはならない。木造家屋の耐震能力は、関東大震災翌年の1924年に設けられた旧耐震基準で「震度5程度で倒壊しない」と定められた。81年に「震度6強以上で倒壊しない」との現行基準に強化されたが、熊本地震で死者が出た家屋の大半は旧基準で建設されたものだったとみられる。

 しかし、現行基準も震度6強以上の揺れに1回耐えることしか想定していない。熊本地震のように震度7の揺れに2度襲われた場合、現行基準の1・5倍の耐震強度がないと被害を防げないという。家屋の耐震性を安価に向上させるには、制震ダンパーの設置が有効だ。

 九州は半導体と自動車産業が集積しており、熊本地震で多くの工場が被災。生産に大きな影響が出た。生産再開に数カ月を要する工場もあった半導体業界は、災害時の協力体制について議論し、部品の相互融通などを行う連絡窓口の整備を決めた。今後は中小企業の対策強化が求められる。

被害は人ごとではない

 近い将来、首都直下地震や南海トラフ地震が高い確率で発生することが予測されている。地震による大きな被害は決して人ごとではない。そのことを肝に銘じて、一人ひとりが備える必要がある。